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エアバッグの仕組みと歴史 偉大な日本人発明者の顛末とは?

エアバッグ

今では自動車に必ず搭載されているエアバッグ。

このエアバックの仕組みを知っていますか?

衝突したときに一瞬にして開くのはなぜか、どのような原理で搭乗者を守るのか、簡単そうで難しいその仕組みについて、説明してみます。

そしてエアバッグの歴史。エアバッグを語る上では欠かせない、発明者についての秘話にも触れていきたいと思います。

目次

エアバッグの仕組み

まずは、エアバッグが作動する仕組みと、搭乗者を衝撃から守る仕組みのです。

イメージとは違うかもしれませんが、それほど難しいものではないので、わかりやすく説明してみます。

衝突時に開く仕組み

エアバッグは車が衝突した瞬間にバルーンが開きます。その時間は、わずか0.2秒。

このように瞬時に開くのは、一体どういう原理なのでしょうか?

衝突の感知

車が衝突すると一気にスピードがダウンします。

それを加速度センサーでキャッチして、センサーの情報を元にエアバッグを作動するかどうか判断します。

インフレーターの点火

エアバックを作動すると判断されたら、すぐにバックを膨らませるインフレーターに信号が送られ、ガス発生装置に点火されます。

そのガスによってバルーンが開くのです。

ガス発生装置とは

エアバッグが一瞬にして開く秘密は、バルーンを膨らませるためのガスを発生する装置にあります。

点火という言葉を使っていることからわかるかもしれませんが、ガス発生装置という名前の火薬です。

あの早業は、爆発させているからできる芸当なのです。

点火されてから、エアバッグが膨らみきるまでの時間は、わずか0.03秒と言われています。

そう考えると、爆発でなければ無理だと納得できるでしょう。

エアバッグに使われている火薬

エアバッグ用の火薬には、主に硝酸グアニジンという物質が使用されています。それ以外に硝酸アンモニウムという、ガスの発生量が多いエアバッグ向きの火薬もあります。

しかし硝酸アンモニウムには温度によって体積が変化するという欠点があり、実用化できたのは、あの「タカタ」だけ。その技術力が仇になって、あのリコール問題が起こったのかもしれません。

搭乗者を衝撃から守る仕組み

次に搭乗者を衝撃から守る仕組みです。

「風船に当たるんだから、衝撃を吸収してくれるのは当たり前」と思ったら大間違い、そんな単純なものではありません。

エアバッグの素材

エアバックの素材としては、主にナイロンが使われています。

ナイロンとは言っても、衣服やストッキングのように柔らかいものではありません。

爆発に耐えるだけの強度が必要ですから、高密度に織り込まれたかなり硬いものです。

その中に爆発した高圧のガスが入っています。

とても風船のように、柔らかいものではないのです。

ベントホール

エアバッグには、ガスを排出するための排出口が設けれています。これをベントホールと呼びます。

わざわざ膨らませたガスを、ベントホールから抜いてしまうという一見無駄なことをするのです。

考えてみると、エアバッグが爆発の勢いで広がっている最中に搭乗者がぶつかったら、逆に大変なことになります。

そこで、ガスが抜けてエアバッグが収縮していくタイミングでぶつかるようにしているのです。

また、搭乗者がエアバッグにぶつかる勢いで、更にベントホールからガスが抜けていくので、その効果でも衝撃が吸収されるという仕組みです。

エアバッグの歴史

エアバッグアップ

エアバッグの歴史に移りましょう。タイトルにも書きましたがエアバッグを発明したのは日本人です。

名前は小堀保三郎さん。実業家、技術家、発明家として活躍された方です。

エアバッグのアイデアを思いつき、私財を使ってまで技術的な裏付けを確認して特許を取得しました。

日本での評価

小堀さんが発明したエアバッグは、発想が突飛だったため日本で評価されることはありませんでした。

また火薬を使うことが、日本の法律(消防法)にも違反していたこともあって、日本メーカーは全く相手にしなかったのです。

欧米での評価

欧米では、小堀さんの発明の前から、クッションのような安全装置が販売されていました(これもエアバッグと呼ぶことがあります)。

その背景もあって、小堀さんのエアバッグも検討され、有効性が確認されていったのです。

そして、1980年にベンツが実用化したことをきっかけに、多くのメーカーに広がっていきました。

このときベンツは、世界中の自動車の安全性を高めるために、自分たちの特許を無償で公開しました。

これもエアバッグが急速に普及した要因です。

日本でも実用化

日本でもエアバッグの有用性が評価され、搭載のために法律も変わりました。

そして1990年代に入ってから広く普及し始めたのです。

日本人が発明したものが、日本では相手にされず欧米で評価されるという(寂しいことですが)よくあるパターンです。

小堀さんのその後

エアバッグの発明という自動車の安全性に大きな貢献をし、特許も持っていた小堀さんですが、その特許はエアバッグの実用化前に有効期限が切れていました。

ですから特許料収入はありません。

そして、ベンツが実用化する5年前、開発費用の捻出が困難になり、夫婦でガス心中するという悲しい結末を迎えてしまったのです。

結局、自分の発明が実用化されることを目にすることもできなかったのです。

人々の役に立つものを発明するために私財をなげうってでも研究する、理系の人間からすると「自分もそうしたいと憧れながらできない」、そんな人生を送った素晴らしい人です。

資金援助をする人や団体がいれば、と悔やまれてしかたありません。

日本で理系離れが進んでいるのも、このあたりにも原因があるのかもしれません。

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