”うるう秒って何? 次回はいつ? 太陽時・原子時・協定時・わかりやすい時間の話”という記事で「国際原子時」について簡単に触れました。
「国際原子時」は、世界の標準時刻を決める「協定世界時 」の元となっている時間で、正確な原子時計を使って測られている時間です。
※国際原子時にうるう秒補正をしたものが世界協定時です。
ただ、いくら正確だといっても原子時計にも誤差があります。国際原子時では、その誤差をどう扱っているのか簡単に説明してみます。
国際原子時とは何か?
かつては時刻は太陽の位置で決めるものでした。
太陽が真南(南半球では真北)に来る時を、正午としてその間を24等分して時間を表します。
国際的にはイギリスのグリニッジ天文台での観測データが基準となっていました。
しかし、時計の精度が上がり、原子時計が作られるようになると、太陽の位置より正確に時を刻むことができるようになります。
そして今では、原子時計での測定が時刻を決める基準になっています。
その原子時計での時刻を「国際原子時」と呼んでいるのです。
どの原子時計を使って時刻を決めるのか?
原子時計は世界中に沢山あります。
その中で、どの電子時計を使って「国際原子時」を決めているのか? 気になりませんか?
まずは、そこから話を始めたいと思います。
原子時計にも誤差がある
まず考えないといけないのは、原子時計にも誤差があるということです。AとB、2つの電子時計があって、Aの方が早く進んでいたとしましょう。
これは「Aの時計が進んだのか?」それとも「Bの時計が遅れたのか?」悩んでしまいます。
いくら考えても答えはでません。
同じ程度に信頼できる原子時計であれば、どちらが正しいとい判断することはできません。
じゃあ平均しよう
それなら、世界中にある信頼できる原子時計を集めて平均すればいいんじゃない? と考える人もいるでしょう。
国際原子時は実際にそれに似た形で運用されています。
国際原子時は、約70か国の機関で可動している420台前後の原子時計などのデータを基にして、国際度量衡局 (BIPM) が運用・管理しているのです。」
「世界70ヵ国」の「約420個の原子時計」、そこまでやるんですね。
管理している国際度量衡局の皆さん、ご苦労様です。いや国際度量衡局のコンピューターさんに言うべきでしょうか。
国際原子時の決め方
国際原子時は、世界中にある約420個の原子時計のデータを基にして決めるとはいううものの、簡単なことではありません。
問題がいくつもあります。
時計同士の時刻を合わせるのが大変
多くの原子時計が示している時刻を平均するとしても、離れた場所にある原子時計が今何時を示しているのか、どうやって知るのでしょうか?
簡単ないい方をすれば、時刻合わせをどうやればいいのかという問題があります。
時刻のデータを信号として送るとしても、簡単ではありません。
300キロメートル離れていれば、光で信号を送っても届くまでに0.001秒かかります。
光が直進してくれば、距離が正確にわかってれば光の速度から遅延時間を計算できます。
でもそういう訳にはいきません。
人工衛星を使って時計を合わせる
そこで、人工衛星を使うことになります。
人工衛星なら、最短距離で光(電波)が届きます。
それには、GPS衛星や静止衛星が利用されています。
国際原子時はどんどん正確になっていく?
標準として使われているセシウム原子時計は、実用化されてから、すでに半世紀が過ぎています。その間に、もっと精度の高い時計も開発されています。
ですが、現在の原子時計を、一気に新しい時計に置き換えるのは簡単なことではありません(大混乱になります)。
国際標準時を決める多くの時計の中に、新しい時計が少しずつ採用され、時間をかけて置き換わっていくものと思います。
そんなに正確な時間が必要なのか?
では、なぜそれほど正確な時間が必要なのでしょうか。
日常生活では問題ありません。
一日が1,000分の1秒違ったからと言って、生活には何の支障もありません。
でも、コンピュータなどのシステムになると、1,000分の1秒、10,000分の1秒が重要になることがあります。
電子金融取引の世界では、すでに1,000分の1秒を争うようになっているそうなので、今以上に正確にしていく必要があるのかもしれません。
原子時計の身近な例はGPS
原子時計を使った身近な例としては、GPSが挙げられます。
GPSは、原子時計を搭載したGPS衛星を利用して位置情報を測定しています。
衛星の原子時計は地上の国際原子時と同期されていて、衛星からの電波がどれだけ遅れて届いたか、という情報から現在位置を計算することができるのです。
学術的な問題
もちろん、学術的には正確な時間の測定は非常に重要なので、今後もどんどん精密な時計が研究されていくのは間違いありません」。
現在でも光格子時計と呼ばれる時計で、300億年で1秒という誤差が実現しています。
≫≫秒の定義が変わる? スカイツリーの実験と光格子時計の衝撃
”うるう秒って何? 次回はいつ? 太陽時・原子時・協定時・わかりやすい時間の話”で紹介したセシウム原子時計は、 1億年に1秒の誤差なので、それに比べても凄い進歩です。
300億年ですよ。
宇宙の年齢が約140億年とされているので、その2倍以上の時間でやっと1秒くるうかどうかというレベルです。
でも、科学者は今後もそれ以上の精度を目指して研究を続けていくはずです。
でも、ここに大きな問題があります。
本当にその精度を実現しているのかどうか、確認する方法がないということです。
比べるための「本当の時間」が誰にもわからないのですから。
≫うるう秒って何? 次回はいつ? 太陽時・原子時・協定時・わかりやすい時間の話
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