「コリオリの力」台風が反時計回りに渦を巻く理由として有名な力です。
しかし、コリオリの力はかなりわかりにくい概念なので、ピンとこない人も多いはず。物理学的に正確に示そうとすると難しいのですが、イメージとして理解するだけならそれほど難しくありません。
そこでコリオリの力と台風の渦の発生について簡単に、できるだけわかりやすく説明してみます。
コリオリの力の発見と難しさ
コリオリの力が導かれたのは1835年で、フランスの科学者 ”ガスパール=ギュスターヴ・コリオリ” によるものです。
コリオリは、仕事や運動エネルギーの概念を提唱したことでも知られる有名な科学者です。
1800年代といえば、ニュートン力学(古典力学)は応用も含めて完成し、理解も進んでいた時代です。その頃に初めて知られるというのは、直感的にわかりにくいものだという証明にもなるでしょう。
コリオリの力が発見された16年後に、フーコーの振り子の実験を行って地球の自転を証明しました。
≫≫フーコーの振り子の実験とは?地球の自転を証明した非公認科学者
フーコーの振り子もコリオリの力を使って説明できるのですが、それまでコリオリの力を利用して地球の自転を確認できるとは思われなかったのです。
また、フーコーの振り子の実験が、コリオリ力によるものだと理解されるまでに時間もかかったようです。
フーコー自身は振り子の回転速度の計算式を残していますが、当時の数学者(フーコーに数学の素養がないことを見下していた人たち)が計算式を証明することができなかったというほどです。
このあたりの話は下の記事で説明していますので、興味もある方は読んでみてください。
コリオリの力をわかりやすく説明
コリオリの力の難しさを強調してきましたが安心してください。イメージするだけなら、それほど難しくありません。
簡単にするため、地球を回転する円盤に例えて考えてみましょう。
図は地球を宇宙から(真北から)眺めた図です。このとき地球は反時計回りに回転しています。
地球上で運動している物体があれば、力が働かない限り赤い矢印のように等速直線運動をします。
物体は直線的に動いていますが、地球が自転しているのでそれにつれて位置が回転します
この物体を地球上で地球と一緒に自転している人(白矢印)から見ると、物体の進行方向が曲がるように見えます。まるで、物体の運動方向を変えようとする力が働いているかのように。
物体自体は等速直線運動しているのに、観測する人の方が等速直線運動していないために、みかけ上現れるのがコリオリの力なのです。
イメージだけでコリオリの力をわかりやすく説明
赤い矢印のように直線運動しているものを、地球と一緒に回転している人から眺めたときにどのように観測されるのか計算すれば、コリオリの力(と遠心力)が計算できます。
Wikipediaにも計算が載っているので知りたい人は見て下さい。
ここでは、物体がどう動くのかまで示さず、イメージだけを説明してみます。
簡単にするため、物体がどこにあるとか、どんな速さで動いているかは無視して、物体が動いている方向だけを考えてみます。
地球の外から、地球と一緒に自転している視点で図を書き直してみます。
すると、一定の位置にいるように見えます。その位置を黄色い矢印で示します。
1番左の図では、矢印は北を向いています。
少し自転すると、矢印の方向は北ではなく少し東の方向になります。tそして自転するにつれて、どんどん東方向にずれていきます。
地球と一緒に回転している人が、自分は北を向いて静止していると考えていたら、矢印の方向がどんどん右にずれていくように見えるのです。
まるで、物体の運動方向を右方向、時計まわりに回そうとしている力が働いているかのようです。逆に南半球では物体の運動方向が左にずれていきます。
ゴルフで言えば、北半球ではボールがスライスし、南半球ではフックするというイメージです。
これがコリオリの力です。
コリオリの力の直感的な表現
- 直線的に動いていいるものを
- 反時計まわりに回っている人からみると
- 時計まわりに回って見える
こう考えると、何となくイメージできるのではないでしょうか?
南半球では、回転方向が逆になるので、コリオリの力は北半球では時計まわりに、南半球では反時計まわりに働くのです。
ここまでの説明は、地球を円盤として考えていました。実際の地球は球状です。球として三次元で考えると一気にややこしくなりますが、イメージとしては同じです。
フーコーの振り子との関係
別記事「フーコーの振り子の実験とは?地球の自転を証明した非公認科学者」で、地球の自転を証明したフーコーの振り子を紹介しました。
振り子が揺れる方向は、北半球では時計まわりに、南半球では反時計まわりに回るというものです。
フーコーの振り子はコリオリ力によって回転すると言っても間違いありません。
コリオリの力の導出
コリオリの力の導出をしたいのですが、長くなりますし、かなり難しいです。特に地表で現れるコリオリの力は三次元であらわさないといけないので特にややこしくなります(上の説明は二次元の場合)。
とりあえずWikipediaのコリオリの力/導出/3次元の場合を見てみてください。頭が痛くなってきますよ。
台風とコリオリの力の関係
台風は、北半球では反時計まわりに、南半球では時計まわりに回転しています。これもコリオリの力によるものです。
何か変だと思いませんか?
コリオリの力は、北半球では時計まわりに回転させるように働くのに、台風は反時計回りに回るのです。逆になっています。
これは、台風の仕組みを考えればわかります。
台風が渦を巻く仕組み
台風は、風速が1秒間に17.2メートルを超える熱帯低気圧のことを差します。
低気圧ですので、台風の中心は当然気圧が低くなっています。
空気は、圧力の高いところから低いところに動くので、周囲から台風の中心に向かって風が流れ込みます。
空気は台風の中心に向かって動くのですが、同時にコリオリの力が働き、北半球では風の向きが右に(時計回りに)曲げられます。
台風の中心に向かう風がコリオリの力によって反時計まわりに曲げられて、台風付近では半時計回りに風が吹くのです。
これが、台風が(北半球では)反時計回りに回転する理由です。
≫台風の目とは? 中心だけが晴れる不思議な仕組みをわかりやすく説明
水の渦に働くコリオリの力
トイレや流し台で排水するときの渦は、北半球では反時計まわり、南半球では時計まわりになるという噂があります。
確かに、排水溝に向かう水流を右に曲げるようなコリオリ力は働きます。
しかし、あまりにも小さすぎて実際にはほとんど影響はありません。
最初に水が流れ始めるときのちょっとした水流の向きの違いでどちらに回転するのかが決まってしまうのです。
ということで、水流の渦の方向が北半球では反時計まわりになるという噂はガセネタです。
コリオリの力が効いてくるのは地球規模の大きな運動だけです。
地球規模の大きな運動と聞けば、普段の生活には関係ないようにも思えますが、気象に大きな影響を与えている生活に密着しているものでもあるのです。