GPS(グローバル・ポジショニング・システム)は、もはや生活に欠かせないものになりました。
自分自身、スマホやカーナビがなければ、知らないところへ行けない体質になり果てています。
このGPS、どういう仕組みで位置を知ることができるのでしょうか?
その仕組み、原理をわかりやすく解説してみます。
GPSとは何か?
GPSは、グローバル・ポジショニング・システムの略で、日本語では“全地球測位システム”と呼ばれています。
元々はアメリカが軍事用に作ったシステムで、人工衛星からの電波を使って位置を測定する仕組みになっています。
12時間で地球を一周する人工衛星を、位置をずらしながら24個配置すると地球全体の位置情報がカバーできるようになります。
アメリカのGPS衛星は約30個あり、もし衛星の一部に故障があっても支障がないように工夫されています。
GPS衛星は、12時間で地球を一周します。
ですが、その間に地球は自転しているので、地上から見ると24時間で一周しているように見えます。
12時間後GPS衛星は同じ位置に戻りますが、その間に地球は半周しているので、地球の反対側とGPSが向き合う形になります。
その12時間後に、GPS衛星がもう一度同じ位置に戻り、地球も一周して最初と同じ位置関係になるのです。
GPS以外の測位システム
GPS衛星はアメリカが運用していますが、他国のシステムに依存しないよう、ロシアではGLONASS、ヨーロッパではガリレオ、中国では北斗という衛星システムを運用し始めています。
このように、全世界をカバーする衛星システムが複数存在しています。
これらの人工衛星で位置を測定するシステムを総合して、GNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)、日本語で”全球測位衛星システム”と呼びます。
準天頂衛星システムとは
全世界を覆う衛星(最低24個)を打ち上げるのではなく、特定の地域を対象にして、GPSと連携させることで位置特定の精度を上げる方法もあります。
これは、準天頂衛星システムと呼ばれ、その代表が日本のみちびきです。
≫≫みちびきについて 日本だけのGPS? 準天頂衛星システムとは
GPSで位置を特定する仕組み
GPS衛星は、自分の位置(軌道)と時間の信号を電波で発信しています。
GPS受信機は、その信号をキャッチして自分の位置を計算するものです。その仕組みを簡単に説明してみます。
距離を測定する原理
衛星から距離が離れるほど、電波が届くまでに時間がかかります。
衛星から10時だという信号が発信され、それを受信した時間が10時0分1秒だとしたら、衛星から電波の速度で1秒かかる距離(比喩ですよ)離れた場所にいることがわかります。
そして、3つの衛星から送られた信号をキャッチすれば、3箇所からの距離を使って現在位置を計算することができるのです。
図で説明すると、赤い彗星衛星からの距離、青い衛星からの距離、黄色い衛星からの距離で円(実際は球面)を書いて交わった点に、自分がいることがわかるという仕組みです。
簡単ですね。
実際にはこれでは計算できない
原理的には上で説明した通りなのですが、実際には大きな問題があります。
衛星からの信号をキャッチした時間がわからないのです。
カーナビやスマホには時計(のシステム)が内蔵されています。でも、そんな時計では使い物になりません。
電波は光と同じ電磁波で、1秒間に約30万キロメートルの速さで伝わってきます。
もし時計が1,000分の1秒ずれていたら、300キロメートルの誤差がでます。
1億分の1秒のずれでも、3メートルの誤差です。
カーナビなどに内蔵されている時計はクォーツ時計です。
『クォーツ時計の原理と仕組み 世界を変えた日本の技術』という記事にも書きましたが、(普通には使われていないほど)高精度のものでも1年で数秒の誤差があります。
すると1日で数百分の1秒、千キロメートル単位の誤差が出ることになってしまいます。
きちんと距離を計算するためには、とてつもなく高い精度の時計が必要になるのです。
実際にGPSで位置を決める方法
カーナビやスマホにそんなに高精度の時計をつけるわけにはいきません。
ですから、実際にはもう1基の衛星を加えて4つの人工衛星からの信号を使うことで受信時間(時計の誤差)を計算し位置を計測しています。
全世界を覆うためには、衛星は最低でも24個必要といいましたが、これは地球上のどこからでも4つの衛星の信号をキャッチできるようにするためび必要な数なのです。
もちろん、もっと数を増やせば、より正確な位置が測定できます。
ちなみに、全世界を覆っているシステムだけで、アメリカのGPS、ロシアのGLONASS、ヨーロッパのガリレオがあり、実際には4つどころか多くの衛星からの信号がキャッチできます。
また、中国の北斗はアジア圏からカバーし始めていますし、日本はみちびきで日本近辺をカバーしています。
そのため、日本近辺はアメリカやヨーロッパ地域よりも多くの衛星が利用でき(30~40個)るのです。
人工衛星側の時計はどうなっているのか?
時間が1,000分の1秒ずれていたら、300キロメートルの誤差になるというのは、衛星側の時計も同じです。
全ての衛星が、高い精度で同じ時間を示すようになっていなければ、GPSとして機能しません。
そのため人工衛星には精度の高い原子時計が搭載されています。
それでも誤差が出てくるので、衛星は一日に一回地上の国際原子時と時間合わせをしています。
そこまでやって、初めてGPSが実用レベルになります。
≫≫GPS衛星の原子時計は地上のものと違う?相対性理論の不思議
スマホやカーナビでの位置補正
技術の塊のようなGPSですが、それでも誤差が出てしまいます。
特にスマホの場合は、アンテナの制約(大きさ)からどうしても精度が落ちるので、GPSだけではなく、Wi-Fiやモバイルネットワークの情報も使って位置の精度を高めています。
「Wi-Fiを有効にすると位置情報の精度が上がります」
というやつですね。
カーナビも、道路情報と組み合わせることで精度を高めています。
スマホもカーナビも位置情報が正確なほど差別化できますので、他にも様々な工夫をして精度を上げているはずです。
≫みちびきについて 日本だけのGPS? 準天頂衛星システムとは
≫国際原子時とは?時刻はどうやって決めているのか
≫GPS衛星の原子時計は地上のものと違う?相対性理論の不思議