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メタンハイドレートとは 日本を資源大国に導く? 不思議な物質

メタンハイドレートをご存じですか?

燃える氷とも呼ばれ未来のエネルギー源として期待されている物質です。実はこのメタンハイドレート、普通の化学物質とはちょっと違う変わったタイプの化合物です。

一体メタンハイドレートとは何なのか? その不思議さをわかりやすく解説してみます。

目次

メタンハイドレートとはどんな物質か

メタンハイドレートは、「メタン」と「ハイドレート」に分けて考えるとわかりやすくなります。

メタンとは

メタンは、化学式 ”CH4” で表される、最小の有機化合物です。

天然ガスの主成分で、微生物(メタン生成菌)によっても生成され、沼地などで発生することもあります。

メタン生成菌は、草食動物の腸内にも存在していて、わずかですが人間の結腸にもいます。

牛のげっぷにはメタンが多く含まれますし、人間のおならにも少しメタンが含まれています。

わたしたちには、なじみ深い燃料といっていいのではないでしょうか。

ハイドレートとは

ハイドレートは日本語では「水和物」と呼ばれ、水分子を含む物質のことを表します。

その水和物の中に、包接水和物と呼ばれる種類があります。

英語では全て ”hydrate” ですが、日本語では包接水和物のことを「ハイドレート」と呼び、それ以外の(普通の)水和物は日本語で「水和物」と呼ぶことが多いようです。

メタンハイドレートの「ハイドレート」も包接水和物を表しています。

包接水和物とは

水分子が、かごのような構造をとって、そのかごの中に他の物質が閉じ込められているものを包接水和物(ハイドレート)と呼びます。

特に、閉じ込められている物質がガスの場合、ガスハイドレートと呼びます。

メタンハイドレートとは?

メタンハイドレートはガスハイドレートの一種で、水でできた籠の中にメタンガスが閉じ込められたものです。

5角形で構成された正12面体の籠と、5角形12個と6角形2個からできた14面体の籠を水分子が形成して、その内部にメタンが閉じ込められています。

メタンハイドレート

この2種類の籠が積み重なって結晶構造になるのですが、12面体2個と14面体6個の割合の時に上手く積み重なっていきます。

その時の分子式は、CH4·5.75H2Oと表され、メタン1個に対して水5.75個という中途半端な割合になります。

メタンハイドレートの不思議

メタンハイドレートは、メタンと水からできています。

しかし、メタンと水の間には化学結合は全くありません。

それどころか、メタンと水はまさに水と油、引き合う力が働かないのです。

ただ、メタンの大きさと籠の大きさがちょうどあっているので、反発しあうものが共存して結晶構造を作っているという不思議な物質です。

メタンハイドレートの性質

メタンハイドレートは、低温、高圧の条件で生成されます。

低温、高圧で、水が存在すると、メタンガスが水に閉じ込められて、メタンハイドレートの結晶になるのです。

温度が上がったり、圧力が下がったりすると、構造が壊れて水とメタンガスに分離します。

メタンハイドレートが存在する場所

石油や天然ガスのように、地面を掘ってもメタンハイドレートが出てくることはありません。

これは、低温、高圧でないと存在できないメタンハイドレートの性質によります。

地面を深く掘っていけば、圧力が高くなりますが地熱で温度が上がります。

低温と高圧が共存できる場所がないのです。

では、メタンハイドレートはどんな場所にあるのでしょうか?

極地の永久凍土

永久凍土の底は、低温で高圧の条件を満たしています。

最初に天然のメタンハイドレートが確認されたのは、このような凍土した。

海の底

海の底では、水圧で圧力が高く、温度も高くありません。

ですから、海底や、海底の土の中(地熱で暖かくならない浅い部分)にメタンハイドレートが存在します。

現在、エネルギー源として期待されているのは、この海底のメタンハイドレートです。

メタンハイドレートはどれくらいある?

地球上にあるメタンハイドレートの量は、まだよくわかっていませんが、炭素に換算して10,000 ギガトンともいわれています。

石炭,石油,天然ガスなどの在来型化石燃料の約 2 倍、大気中にある二酸化炭素の20倍、海水に溶けている二酸化炭素の3分の1というとてつもない量です。

このことがわかったのは比較的最近で、地球上にそれまで考えれれていたより多くの炭素が存在するという大きなインパクトを与えました。

エネルギー源としてのメタンハイドレート

エネルギー資源として使えるメタンハイドレートはどれくらいあるのでしょうか。

地球上に存在するメタンハイドレートが全て使えるという訳ではありません。

コストの問題があります。

特にエネルギー源の場合には、エネルギーコストを考えないといけません。

エネルギー100に相当するメタンハイドレートを得るために、200のエネルギーが必要ならエネルギー源として何の意味もありません。

少ないエネルギーで取り出せるものだけが、エネルギーとして使えるのです。

まだ、採取技術の開発が進んでいる段階なので、実際に使えるメタンハイドレートの量はよくわかっていないのが実情です。

日本のエネルギー資源になるか?

日本近海は、メタンハイドレートの宝庫です。

もし、メタンハイドレートを効率的に採取できるようになれば、エネルギー資源を自産することができるかもしれません。

まだコスト的に採算が合う採掘法は確立されていませんが、研究段階では日本は世界のトップを走っています。

実用化はいつ頃

実用化には問題が山積で、現在(2019年)の時点では実用化の目途はたっていません。

上手くいっても十年以上先だとも言われています。

先の話にはなってしまいますが、メタンハイドレートが日本という国の将来を握っているのかもしれません。

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参考文献:総説 メタンハイドレート―海底下に氷状巨大炭素リザバー発見のインパクト―松本 良

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