ナイロンはストッキングなどに使われている合成繊維の代表格のようなものです。このナイロン、どのようなものなのかご存じでしょうか?
ナイロンは今では繊維に限らず様々な用途で使われています。
一体ナイロンとは何なのかか? どんな用途に使われているのか、わかりやすく解説したいと思います。
ナイロンとは何か?
1935年に、アメリカ、デュポン社の”ウォーレス・カロザース”が合成した世界初の合成繊維です。
世界初の人工繊維であるレーヨンは、自然界にあるセルロースという物質を人工的に繊維にしたものですが(レーヨンとは? 絹のような光沢を持った世界初の人工繊維参照)、ナイロンは物質そのものから人工的に合成したものなので合成繊維と呼ばれています。
ナイロン登場時のキャッチフレーズは「石炭と水と空気から作られ、鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」というものです。石炭と水と空気から作られる合成繊維が画期的だったことが伺えますね。
ナイロンの構造
ナイロンはアミド基(-NHCO-)と呼ばれる構造を持ち、鎖のように長く連なった物質(高分子)です。そのため、一般名称としては「ポリアミド(ポリは高分子を表す)」と呼ばれます。
ナイロンはアミド基同士が強く引き合うため、強靭な特性を持っています。
ナイロンにも色々な種類があり、アミド基とアミド基の間の炭素の数を数字で表して区別しています。現在使われている主なナイロンとしては、ナイロン6,6、ナイロン6、ナイロン4,6、ナイロン11、ナイロン12が挙げられます。
カローザスが最初に合成したのはナイロン6,6、その数年後日本で開発されたのがナイロン6で、この2種類がナイロンとしては圧倒的に多く使われています。ですから通常ナイロンと呼ばれるものはこのふたつのどちらかだと思って間違いありません。
ナイロンという名称
「伝線(run)しないストッキング用の繊維」という意味でつけられたとされています。また、表向きの意味とは別に発明者のカローザスがnil(虚無)という意味を込めていたという説もあります。
ちなみにナイロンというのは、デュポン社の商品名でしたが今ではポリアミド全般を示す一般名称として広く使われています(あえて商標を取得しなかったそうです)。
ナイロンの発明者カローザスは優秀な化学者でしたが、若い時からうつ病を患い自分に自信を持つことができないタイプだったようです。
ナイロンを開発しても自分は何も成し遂げることができないという強迫観念にかられていたようです(ナイロンの名前に虚無という意味を込めたといわれる理由はここにあります)。
世界初の合成繊維の発明という偉大な業績も彼にとっては意味がなく、ナイロンが一般に公表される前に自殺してしまいます。
ナイロンの形態別用途
ナイロンは当初繊維として合成されましたが、今では繊維以外の形態でも広く使われています。
それぞれの形態と用途を紹介しましょう。
繊維
ナイロンといえばやはり繊維です。ストッキングが代表的な用途でしょう。
それ以外にも合羽やウインドブレーカー、水着、傘、各種スポーツウェアなど幅広く使われています。
モノフィラメント
モノフィラメントは、一本の繊維という意味で衣料用の糸は細い繊維を束ねて紡績しているのに対して、一本だけで糸にしたものです。
ここでは、通常の糸よりも太い糸をモノフィラメントと呼ぶことにします。と言ってもわかりにくいと思いますので、用途例を示します。
釣り糸やギターの弦、テニスのガットなどです。イメージがわかったかと思います。
その他草刈り用ナイロンコード(金属刃ではなくナイロンの糸を回転させて草を刈る)にも使われています。
この用途を見だだけでもナイロンの強靭さがわかりますね。
フィルム
ナイロンはフィルムとしても使われています。
ナイロンフィルムは非常に強靭なため、強度が求められる用途、主に食品包装に使われています。
耐ピンホール性に優れているため、小さな穴も許されないレトルトなどの液体が入った食品包装はナイロンフィルムの独壇場です。
成形体
ナイロンは通常のプラスチックと同じように様々な形の成型品としても使われています。
プラスチックの中では耐熱性が高く強靭であることから、一般向けというよりは工業製品に使われるエンジニアリングプラスチックに分類されます。
特に自動車用に使われることが多く、エンジンルーム内の部品などの多くがナイロンで作られています。耐熱性が高く、耐薬品性にも優れているためです。
オイル、ガソリン、ワックス、ウォッシャー液、バッテリー液など多様な薬品が使われている自動車用の材料は耐薬品性が求められますので(凍結防止剤の塩化カルシウムに弱いことが唯一の欠点ですが)。
ナイロンといえば繊維のイメージが強く、実際に当初は繊維として開発されたものです。しかし、現在ではそれ以外にも釣り糸や食品包装フィルム、自動車部品など私たちの生活と切っても切れないものになっているのです。