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クォーツ時計の原理と仕組み 世界を変えた日本の技術とは? 

時計SEIKO

時計にも色々な種類がありますが、一番世の中に出回っている時計は、クォーツ時計です。

安くて正確なので、身の回りにある時計は全てクォーツ時計と言ってもいいほどです。

かつては高性能の証として ”Quartz” という文字が目立つように刻印されていたのですが、今では当たり前すぎてあまり表示されていません。

それどころか、クォーツ時計といえば、安物のイメージさえあるほどです。

クォーツ時計とは、一体どんなものでしょう。

その仕組みを簡単に説明したいと思います。

目次

クォーツ時計の仕組み

クォーツ時計はどうやって時間を測っているのでしょう。

その仕組みをわかりやすく説明してみます。

クォーツとは?

クォーツ(Quartz)は、英語で「水晶」のことです。

水晶は、別記事「珪藻土の構造と吸水する原理や仕組みを簡単に説明してみる」で紹介した珪藻土の構成物質、二酸化ケイ素(SiO2)の結晶です。

普通の砂の主成分で、地球の表層の約6割はSiO2を含む鉱物ともいわれているくらいありふれたものです。

クォーツ時計に使われているのは、この二酸化ケイ素の純粋な結晶です。

クォーツの圧電効果

水晶は「圧電効果」を示すという特性を示します。

力をかけて水晶を変形させると電圧が発生し、逆に電圧をかけると変形するという不思議な性質です。

それによって、水晶振動子と言われる少し変わった振動特性を持つことができます。

この水晶振動子を使って時間を計るのがクォーツ時計です。

物体が振動する仕組み

クォーツに限らず、固体を変形させると振動します。

変形すると元の形に戻ろうとしますが、勢いがつきすぎて元の形で止まらず反対方向に変形してしまいます。

そして、また元の形に戻ろうとして、勢いがつきすぎて……。

バネを伸ばして離すと、縮みますが、縮みすぎてまた伸びて、と振動するのと同じです。

固体を叩くと音がするのは、このような振動が起きているからです。

物体の形や硬さや重さによって、振動の周期(音の高さ)は変わってきて、その物体が振動する振動数を固有振動数と呼びます。

クォーツの振動

水晶振動子は電圧をかけると変形します。

すると、一定の周期で振動する固有振動を起こします。

水晶を所定の大きさ、形状にカッティングすることで周期を調整し、通常は32,768ヘルツで振動するようにしています。

クォーツ時計では、この周期的な振動を利用して時間を測定しています。

固体を叩く場合のように一度変形させただけでは、振動は徐々に小さくなって止まってしまいます。

水晶振動子ではタイミングを合わせて電圧をかけることで振動を続けることができるのです。

ブランコをタイミングに合わせて押すことで揺れ続けることを考えるとわかりやすいと思います。

タイミングがぴったり一致せず少しずれてもブランコは一定周期で揺れ続けるのと同じように、水晶子は一定周期で振動し続けるのです。

クォーツ時計の精度

クォーツ時計は一般的なものでも、1ヶ月で15 ~30秒程度の誤差、精度の高いものでは1年で数秒程度の誤差で時間を計ることができます。

それまでに使われていた「ゼンマイ式時計」などの機械的な時計では、どうしても1日に数秒の誤差が出ていたので、それに比べるとはるかに高精度な時計です。

電波時計

最近では、より精度の高い電波時計を使うことも多くなってきました。

この電波時計もクォーツ時計です。

普通のクォーツ時計と違うのは、時刻を発信する標準電波をキャッチして、定期的に時刻のずれを修正していることです。

標準電波は、原子時計を使って測定した正確な時刻を発信している電波です。

日本では、福島県の「おおたかどや山標準電波送信所」と、佐賀県の「はがね山標準電波送信所」から標準電波が発信されていて、日本全国に届くようになっています。

原子時計とは?

原子時計は1億年に1秒程度の誤差ではかれる精度の高い時計です。

別記事「うるう秒って何? 次はいつ? 時間にまつわる不思議な話」でも説明していますので興味があれば見て下さい。

クォーツ時計の歴史

SEIKO腕時計

クォーツ時計が初めて作られたのは1927年だそうです。

そのクォーツ時計は真空管を使っていたこともあって、タンスくらいの大きさでした。

クォーツ時計の小型化と腕時計の発売

そこからクォーツ時計を小型化する開発が始まります。

クォーツ時計の小型化は、壁時計くらいまでは順調に進んでいきました。

問題は腕時計です。

腕時計は、小さいだけでなく、衝撃にも強くなければ使い物になりません。

その難題を解決して、クォーツ式の腕時計を世界で最初に発売したのが ”セイコー”(当時は精工舎)で、1969年のことでした。

これによって、セイコーは世界に名をとどろかす大時計メーカーになりました。

クォーツ式腕時計の発展

セイコーが初めて販売したクォーツ腕時計は45万円もしたそうです。

当時の大卒初任給が4万円程度なので、給料約1年分です。

その後低価格化が進み、クォーツ時計は全世界に広まっていくことになります。

このように急速に広まった理由としてセイコーが特許を開放して誰でも使えるようにしたことが挙げられます。

クオーツ式時計の技術を世界中に普及・発展させるためにセイコーが採った決断によって、世界中の人が安くで正確なクォーツ時計の恩恵を受けることになったのです。

特許の開放

エアバッグの仕組みと歴史 偉大な日本人発明者の顛末とは?」という記事で、ベンツがエアバックの特許を無償で公開したことで急速に広まったことを書きました。
セイコーはその10年前に特許の無償公開を行っていたのです。

消え去った音叉時計

セイコーが特許を開放した背景には、音叉時計の教訓があったのかもしれません。

音叉時計というのは、1960年にブローバ社から発売された新しい原理の時計です。

それまでの機械式時計に比べてはるかに精度の高い時計でしたが、ブローバ社は他社に特許の供与を許しませんでした。

そのため、他の時計メーカーはブローバ社の音叉時計を超える時計の開発に力を入れることになりました。

その一環がクォーツ時計の開発でした。

そして、クォーツ時計の登場とともに音叉時計は姿を消したのです。

もし音叉時計が世界に広まっていたら、クォーツ時計の研究は今より遅れていたことでしょう。

ブローバ社の特許の独占は、クォーツ時計の開発を促進させ、自らの命を縮める結果に終わったのです。

現在のクォーツ時計

その後もクォーツ時計の低価格化は進み、今では100均でも買えるほどになっています。

でもクォーツ腕時計は高級なものが増えてきています。

今では、スマホをみれば正確な時間を知ることができます。

そのため、腕時計は正確な時間を知るためでなく、ブランドとして身に着けている人が多くなってきているのです。

精度が低い機械式の腕時計の需要が増えているのも、その理由です。

クォーツ腕時計もブランド化が進み「正確な時間を知る」という機能だけでなく、新しい価値を提供する方向に進んでいるのです。

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