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フリーラジカルとは何か? 一重項と三重項、酸素の不思議にも迫ってみる

フリーラジカルという言葉を聞いたことがありますか。

活性酸素と同じ意味で使われることが多いのですが、本来フリーラジカルと活性酸素は全く別のものです。

フリーラジカルであって活性酸素でもある、そういう物質が生体内で大きな影響をおよぼしているので、似たような意味で使われているに過ぎません。

活性酸素については別記事で説明したので、今回はフリーラジカルとは一体どんなものなのか、簡単に解説してみます。

またフリーラジカル関連する酸素の不思議な性質、一重項酸素、三重項酸素についてもわかりやすく説明してみます。

≫≫活性酸素とは? 知っておきたい原理原則をわかりやすく説明してみる

目次

フリーラジカルとは何か

フリーラジカルとはどんなものなのか、Wikipediaの ”ラジカル” の項目を見てみます(化学では、フリーラジカルは単にラジカルと呼ぶことが多いので)。

ラジカル (radical) は、不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオンのことを指す[1]。フリーラジカルまたは遊離基(ゆうりき)とも呼ばれる。
Wikipedia

ラジカルとは「不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオンのことを指す」と書いてあります。

電子は、分子の中では通常2個ずつペアになって存在しています。

その方が安定な場合が多いからです。

そのペアになるはずの電子が、ひとつだけで単独で存在しているものをフリーラジカルと呼んでいます。

電子はふたつ寄り添っていたいので、ひとり者の電子は相手を見つけるとペアになろうとして反応を起こすのです。

男女の関係のようなものですね。

フリーラジカルにも色々ある

ラジカルの多くは、独り身で不安定なため反応性が高いという特徴があります。

ただ、ひとり者でも快適な場合や、周囲の状況で相手と対になりにくい場合など、反応性が低いラジカルもあります。

ラジカルになっても安定な物質の中には、反応性の高いラジカルを安定化して自分がラジカルになり、有害な反応を抑える作用を持ったものもあります。

活性酸素となるフリーラジカル

フリーラジカルは不対電子をもつものの総称なので、酸素に限りません。

活性化された酸素を表す「活性酸素」とは意味が全く違います。

ただ、活性酸素の一部は、フリーラジカルでもあるのです。

生体反応に作用する狭い意味での活性酸素は、次の4つの物質でした。

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  • スーパーオキシドアニオンラジカル(スーパーオキシド)
  • 過酸化水素
  • ヒドロキシルラジカル
  • 一重項酸素

このうち、「スーパーオキシド」と「ヒドロキシルラジカル」のふたつがフリーラジカルです。

活性酸素の中でも、特に反応性が高い2つがフリーラジカルなので、「活性酸素」と「フリーラジカル」を同じように使っているのです。

活性酸素とフリーラジカルの関係性

活性酸素とフリーラジカルの関係性を図に示してみました。

ブリーラジカルと活性酸素

広義の活性酸素の中に狭義の活性酸素があります。

また別の表現としてフリーラジカルというものがあります。

それが重なった部分に存在しているのが、「スーパーオキシド」と「ヒドロキシルラジカル」なのです。

スーパーオキシドとヒドロキシラジカルの構造

酸素は、結合に寄与する電子(最外殻電子)を6つ持っています。

スーパーオキシドは下のような構造になっています(点が電子です)。

スーパーオキシド

酸素原子ふたつが、真ん中の電子を共有して結合しています。

そこに電子をひとつ加えたのが、スーパーオキシドです。

赤い電子が、ペアになっていません。

これがラジカルです。

スーパーオキシドは電子を1つ余分にもっているので、マイナスの電荷を持っています。

そのため正式には「スーパーオキシドアニオンラジカル」と呼びます。

※アニオンは陰イオンのことです。

イオンであって、ラジカルでもあるという物質です。

ヒドロキシラジカルの構造

ヒドロキシラジカルは、下のような構造になっています。

ヒドロキシラジカル

酸素と水素が、電子を共有して結合した構造です。

赤い部分の電子がペアになっていません。

このヒドロキシラジカルが一番反応性の高い活性酸素です。

酸素という不思議な物質

酸素

ペアになっていない不対電子を持ったラジカルは、ペアになった状態よりも不安定なのが普通です。

でも、そうでない不思議な物質もあります。

酸素です。

ありふれたもののように思える酸素は、実はかなり珍しい物質なのです。

酸素分子の構造

酸素分子の化学式はO2で、酸素原子がふたつ結合した構造です。

このとき、電子はどのように配置されているのでしょうか。

酸素に対して、一重項酸素とか三重項酸素という呼び方があります。

この2種類の酸素は、電子の配置が違います。

それぞれの電子配置を簡単に説明してみます。

一重項酸素

通常は、原子の周りの最外殻の電子が8つになると安定になります。

酸素原子は最外殻に電子を6つ持っているので、電子をふたつずつ出し合って共有すれば、どちらの原子の周りにも8つの電子が存在することになります。

一重項酸素構造

このような電子配置をした酸素分子を「一重項酸素」と呼びます。

普通なら、この状態が安定なはずです。

しかし「一重項酸素」は活性酸素のひとつとして数えられるほど反応性が高い状態なのです。

三重項酸素

通常の酸素分子は、下のような電子構造になっています。

三重項酸素電子構造

共有する電子は、ひとつずつ。

そのせいで、ペアになっていない不対電子がふたつもあります。

酸素分子はラジカルなのです。

酸素分子のように不対電子がふたつあるものを、「ジラジカル」とか「ビラジカル」と呼びます(ジ、ビ、は2を意味する接頭語です)。

普通に考えれば、不安定なはずの構造ですが、酸素の場合はこれが安定なのです。

この状態を三重項酸素と呼びます。

なぜ三重項酸素の方が安定なのか

なぜ、三重項酸素の方が安定なのでしょうか?

分子内では、プラスの電荷を持った原子核とマイナスの電荷を持った電子の引き合う力とマイナスの電子同士が反発する力が働きます。

それを計算すれば、一番安定な配置が決まります。

イメージ的には、電子がペアになって安定化する効果より、マイナスの電荷を持つ電子同士が近づく反発力の方が大きいからと考えてもいいでしょう。

ひとりで寂しいので一緒に住む相手は欲しいけど、部屋が狭すぎてふたりで住むのが大変なので別居しているといったところです。

ちなみに、一重項、三重項という呼び方は、量子力学のスピンという性質からつけられた呼び名です。

一重項酸素が活性酸素と呼ばれるわけ

一重項酸素は、普通の酸素分子(三重項酸素)よりも不安定で反応しやすいので、普通よりも活性化された酸素「活性酸素」の仲間に入れられています。

普通の酸素も、他の物質の中では反応性が高いものですが、それよりも少しでも反応性が高くなっていれば「活性酸素」と呼ばれるのです。

酸素の不思議な性質

普通の酸素は、不対電子をふたつ持った三重項酸素です。

そのため不思議な特性を示します。

酸素は磁石にくっつくのです。

もちろん気体の酸素は磁石にくっついたりできませんが、温度を下げて液体酸素にすると、磁石にくっつく現象を見ることができます。

これは、電子のスピンという性質によるものです。

電子のように電荷を持ったものがスピン(自転)すると、小さな磁石になります。

対になっている電子は、磁石の向きが正反対になるように並ぶので、磁石の効果を打ち消し合います。

でも、対になっていない不対電子は、磁石のままです。

酸素分子が不対電子を持っているということが、磁石にくっつく性質を生み出しているのです。

フリーラジカルは不安定なのか?

フリーラジカルは反応性が高く、ラジカルでないものは反応性が低いという傾向はありますが、絶対的なものではありません。

他の影響の方が上回ることもあるからです。

ただ活性酸素の親玉である「ヒドロキシラジカル」は、反応性が非常に高いことが知られています。

活性酸素の悪影響もほとんどが、ヒドロキシラジカルによるものです。

個人的には、「活性酸素」とか「フリーラジカル」のようなあいまいな表現を使わずに「ヒドロキシラジカル」の影響、といった具合に物質を特定して説明して欲しいと思っています。

その方が正確で、あいまいな部分がなくなるので議論しやすいですから。

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