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ラプラスの悪魔とマクスウェルの悪魔の濃密な関係

 ラプラスの悪魔とマクスウェルの悪魔、物理の二大悪魔ですが、最近この悪魔同士は密接な関係を持っているのではないかと思い始めました。

 新しくブログを始めていますが、少し込み入った話になりますし、このサイトのメインテーマ熱力学にも関連するので、こちらに書いて置きます。

目次

ラプラスの悪魔

 ラプラスの悪魔は、過去も未来も決まっているという考えかたです。

 Wikipediaから引用すると、次のようになります。

もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。

— 『確率の解析的理論』1812年
Wikipedia

 ニュートン力学に従う限り、ラプラスの悪魔は存在し未来は決まっていることになります。人間の自由意志というのは妄想に過ぎないのです。

 しかし、量子力学の登場によってラプラスの悪魔は一旦退場することになります。

量子力学の誕生

 量子力学では、物質の位置と運動量を同時に知ることができません。位置と運動量から未来を計算することはできないのです。

 そういう意味では、ラプラスの悪魔は量子力学によって消滅させられました。

 でも量子力学も決定論です。未来が決まっていることには変わりありません。

 ラプラスの悪魔がいなくなったとしても、人間の自由意志が復活した訳ではありません。ラプラスの悪魔は姿を変えて潜んでいるのです。

≫≫別サイト:ラプラスの悪魔とは 未来は決定しているのか?意思によって変わるのか?

マクスウェルの悪魔

 マウスウェルの悪魔は、分子や原子の動きを観察して、その結果に応じて対応を変えることで、熱力学第二法則を破る存在です。

 マクスウェルの悪魔と熱力学第二法則を両立させるような説が色々登場しました。

 今では、情報熱力学という形で説明されるようになっています。

 悪魔が分子や原子の状態を観察して記憶し、その記憶に従って動作を変えることで、等温仮定で熱が仕事に変わるという、一見エントロピーが小さくなるような現象が起こります。

 しかし、悪魔の中で状態を記憶していメモリーに情報が残っています。

 最初の状態と違うのです。

 熱力学第二法則は「他に何の変化もないように等温仮定で熱が仕事に変えることはできない」というものです。

 メモリーに変化があれば問題はありません。

 そして、メモリーを消去して元に戻した後にエントロピーが小さくなっていなければいいのです。

 そして、メモリーを消去する過程で仕事が熱に変化し、全体としてエントロピーが小さくなることはできないのです。

マクスウェルの悪魔の実験

 マクスウェルの悪魔に関する実験は、すでに色々行われています。

 予測できない熱揺らぎを観測して、その結果によって操作を変えるフィードバック系で、見かけ上(メモリーを除いて)エントロピーが小さくなるような現象が確認されているのです。

≫≫別サイト:物理に巣くうマクスウェルの悪魔とは何か? わかりやすく簡単な説明に挑戦してみる

自由意志とマクスウェルの悪魔

 ここで人間を考えてみます。

 人間は、物事を観察して、それによって行動を変えるフィードバックを常におこなっています。

 予測はできないけども、放っておいてもほとんど何の影響もない、熱揺らぎという現象が、フィードバック系では大きな影響を与えるのです。

 ラプラスの悪魔が排除した「人間の自由意志」は、マクスウェルの悪魔の「揺らぎのフィードバック」で蘇るのではないでしょうか。

「フィードバック系は決定論に従わない」

 そう思えるのです。

 もちろん、何の証明もしていません。本当かどうかわかりません。

 でも私自身は、そのような気がしてならないのです。

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