大きな輪が印象的な土星。
この輪が何でできているのか、なぜ安定して存在できるのか、長い間謎でした。
それを解明したのが、大科学者 “マクスウェル” です。そしてその研究から気体の分子運動の理論まで作り上げました。
その土星の環と、気体の分子運動、どう考えても全く違うものですが、このふたつの間には大きな関係があるのです。
一体どのような関係があるのか、それを見出したマクスウェルとともに見ていくことにしましょう。
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土星の環の発見
土星の環を始めて観察したのは、あの”ガリレオ・ガリレイ”です。
自作の望遠鏡を使って見つけたのですが、環になっているとは思わなかったようです。
「土星には耳がある」
ガリレオは、こんな言葉も残しています。
高性能な望遠鏡がなくても、単なる丸い星ではないとわかるほど土星の輪は大きく、鮮明だったのです。
環になっていることを見つけた人
土星の耳が輪になっていることを最初に見つけたのは、”クリスティアーン・ホイヘンス”という人です。
「ホイヘンスの原理」という波の伝わり方についての法則でも有名で、光が波だと最初に主張した人でもあります。
≫≫光の速度は空気中と水中どちらが速い? 最初に実験したのは誰?
ここから多くの科学者や天文学者が土星の環に魅了されていくことになります。
土星の環は何からできているのか?
この土星の環、科学者たちを悩ませた問題でもありました。
「環が安定して存在しているのはなぜか?」
ということがわからなかったのです。
環が大きな固体でできているのなら、そのうち崩壊してしまいます。
気体や液体でできていても、あの形を維持できません。
土星の環は、ホイヘンスが発見してから200年もの間、謎に包まれていたのです。
マクスウェルの回答
土星の環の問題にけりをつけたのは、”ジェームズ・クラーク・マクスウェル”という科学者です。
後に、電磁気学を完成させることになる大科学者のひとりです。
マクスウェルは、ケンブリッジで2年に1度開かれるアダムズ賞のテーマ「土星の環の構造と安定性」という問題に応募することにしました。
まずは、土星の輪が固体や気体や液体でできていると安定な環にならないことの証明から始めました。
次に、環がレンガのような固体の欠片が集まってできているというモデルの検討に入ります。
ひとつひとつの欠片が、無秩序に動き乱雑にぶつかり合っているという複雑なモデルで、土星の環が安定できることを見出したのです。
やっと、長らく解決できなかった土星の環の問題を解決したのです。
気体の分子運動との関係
マクスウェルは、土星の環の中で欠片が乱雑にぶつかりあっていることを証明したことから、同じように乱雑にぶつかりあっている気体分子を考えるようになったそうです。
でも、複雑すぎて理論的に進めることがなかなかできませんでした。
マクスウェルは、結局分子ひとつひとつの運動を考えることをあきらめて、統計的に取り扱うことにしました。
分子には速く動いているものも、遅く動いているものもあります。マクスウェルは、その速さの分布を求めたのです。
現在「マクスウェル分布」と呼ばれている分布式です。
この分布式によって、粘度などの気体の特性を導くことができ、次々に実験で確かめられていきました。
これが、あの「マクスウェルの悪魔」につながっていきます。
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統計力学の誕生
これをきっかけに、分子の運動を統計的に表す”統計力学”という物理分野が切り開かれました。
そのきっかけ実は「土星の環」だったのです。
もし土星に輪がなければ、統計力学の誕生はもっと遅れていたかもしれません。
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