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具体例でみる熱力学6/変化する方向がわかる?

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ここまで、水と水溶液の混合を例にして、仕事を取り出す方法を考えてきました。
そして、どの方法でも仕事の最大値は同じになることを示しました。
言い換えると、同じ値になるように各種の特性が決まっているのです。
今回はこれまでのまとめを行い、新しい視点を提示します。

目次

自然に起こる変化は上手くやればエネルギーが取り出せる

水と水溶液は放っておいても勝手に混合しますが、そのときに上手くやれば仕事を取り出せるのでした。

他にも蒸気圧を使う方法では、真空中で水が蒸発するときに仕事を取り出しました。
これも自然に起きる変化です。

水素と酸素が反応して水になるのも自然に起きる方向です(室温で触媒などを使わなければ反応速度は非常に小さいですが)。
この場合も燃料電池を使って仕事を取り出すことができました。

「自然に起こる変化は、上手くやれば仕事を取り出せる」と言ってもいい気がします。

逆の変化させるには仕事が必要

溶液から水を分離する、真空中で水蒸気を水にする、水を水素と酸素にする、といった逆の変化を起こすには仕事が必要でした。

仕事を少なくすることはできても限界があります。
その限界は、逆変化で取り出せる仕事の量と一致しています。

発想を変えてみる

ここで発想を変えてみましょう。
「自然に起きる変化は上手くやれば仕事を取り出せる」
ではなく、
「上手くやれば仕事を取り出せる方向へ自然に変化する」
と考えるのです。

その方がすっきりします。

取り出せる仕事の最大値は決まっています。
でもそれより少なくなることは問題ありません。
全く仕事を取り出さないで変化してもいいということです。

逆に仕事をしなければ変化しない場合、仕事の最小値が決まっています。
それより多くの仕事が必要なのです。
仕事ゼロでは、絶対に起きません。

自然に起きる変化は、仕事を取り出す方向に進むのです。

これまで、取り出せる仕事の最大値を調べてきましたが、これは「変化はどの方向に進むか?」という問題と大きく関連していたのです。

変化の方向を計算できないか

AとBのふたつの状態があるとします。

AからBへの変化が自然に起きるのかどうかを知るためには、仕事を取り出せるかどうかがわかればいいのです。
それが簡単にわかる方法はないものでしょうか?

物質が持つ内部エネルギーというものがありました。
状態Aの内部エネルギー、状態Bの内部エネルギーがわかれば、AからBへ変化させたときのエネルギー変化がわかります。

同じように、状態によって決まるなんらかの量があって、その差を計算すれば仕事が取りせるかどうかわかれば、便利です。

保存する性質が必要

エネルギーの場合は保存するという性質があります。
AからBに変えたときのエネルギー差とBからAに変えたときのエネルギー差がプラスマイナスゼロになります。

そうでなければ、AからBに変えた後、BからAに戻したとき、最初とエネルギーが違うということになっています。

状態だけで決まる量は、保存していなければなりません。

しかしAからBに変えるときの仕事は変化のさせ方で変わってきます。
エネルギーのようにはいきません。

得られる仕事の最大値がわかればいい

といって悲観することはありません。

AからBに変えるときの仕事は変化のさせ方で変わりますが、得られる仕事の最大値はどの方法でも同じでした。

そしてAからBに変えたときに得られる仕事の最大値は、BからAに変えるときに必要な仕事の最小値と等しいのでした。

これを使えば、エネルギーのように状態で決まる量が作れそうです。

自由エネルギーというもの

得られる仕事の最大値を知ることができる量として「自由エネルギー」というものがあります。

状態Aの自由エネルギー、状態Bの自由エネルギーが定義できて、AからBに変わると自由エネルギーが減るのなら、その分が仕事として取り出せるというものです。

自由エネルギーが減少する方向へは自然に変化できますが、自由エネルギーが大きくなる方向へ自然に変化することはないのです。

自由エネルギーに2種類ある

自由エネルギーは2種類あります。
ヘルムホルツの自由エネルギーとギブズの自由エネルギーです。

2種類あるということは、万能ではないということです。

ヘルムホルツの自由エネルギーは、体積一定の条件で起きる変化の方向を表すのに対して、ギブズの自由エネルギーは圧力一定の条件で起きる変化の方向を表すものです。

体積変化による仕事

状態を変化させるとき体積が増えたとします。

大気中での変化だったら、その体積増加部分にあった空気を押しのけなければなりません。
それにエネルギーを使ってしまうのです。

体積一定なら問題ありませんが、体積が変わる場合はそれを考慮しないといけないのです。

そこで、体積一定の場合はヘルムホルツの自由エネルギー、圧力一定で体積が変わる場合はギブズの自由エネルギーを使うのです。

私たちは、ほぼ1気圧の一定圧力下で暮らしています。
目にする現象も、ほとんど一定圧力下で起こっているので、ギブズの自由エネルギーを考えれば、どの方向に変化するのかわかるのです。

逆に言えば、自然に起こっている現象はギブズの自由エネルギーが減少しているのだと考えることができます。

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