ミレニアム懸賞問題をご存じですか?
アメリカのクレイ数学研究所が2000年(まさにミレニアム)に発表した数学の7つの未解決問題です。その問題を解決したら、賞金なんと百万ドル!
今世紀中に解けるかどうかという難問ぞろいでしたが、その中の一問だけは解決済みです。
このミレニアム問題とそれを解決した男について語ってみたいと思います。
ミレニアム懸賞問題とは?
まずは、7つのプレミアム懸賞問題をさっと紹介しましょう。
それぞれにWikipediaへのリンクを貼っていますので、興味のある方はどんな問題なのか見てみてください(難しいです)。
私もこれらの問題について語れるほどの知識はありません(悲)。
ポアンカレ予想の解決
7つの問題のうち6つは、現時点で未解決です。
ひとつだけ解決済みの問題があります。6番目に書いた「ポアンカレ予想」です。
ポアンカレ予想は、1904年にフランスの数学者”アンリ・ポアンカレ”が予想したもので、プレミアム問題発表の約100年前から知られていました。
ポアンカレ予想を解決した男
ポアンカレ予想は、ミレニアム問題が発表されて間もない2002~2003年に、ロシア人数学者”グリゴリー・ペレルマン”が予想が正しいことを証明しました。
当時、数学界から離れていた(本人は数学者を辞めたと思っていた)、少し変わった人物のようです。・
ペレルマンの論文
数学界から離れ、他の数学者との交流も絶っていたペレルマンが突如ネット上に論文を公開しました。
ポアンカレ予想に関する論文です。
実はポアンカレ予想を解決したという論文は多く出ています。もちろん全て不完全なものです。
ネット上にプレプリントを公開しただけでは通常見向きもされません。査読(専門の査読者が内容をチェックする)つき学術書に掲載されたもの以外に注意を払う時間などないからです。
しかし、ペレルマンの論文は大きな注目を浴びたのです。
ペレルマンという人物
ペレルマンの論文が注目された理由は彼の人柄にありました。
彼を知る人たちは彼の天才的な頭脳だけでなく、繊細さと頑固さを知っていたからです。とにかく細かくチェックして間違いないと確信したものしか公表しない人だったのです。
不完全な答えを口にすることができない人で、自分が納得してない業績に与えられた賞は辞退するほどでした。
そのペレルマンが沈黙を破ってまで発表したです。
「ポアンカレ予想を証明した!」とすら書いていない論文だったのに、ただならぬ内容に違いないと数学界がざわめいたのです。
ペレルマンの論文の検証
そのためペレルマンの証明の検証が開始されました。
複数の数学チームが検証を行ったのですが証明自体が難解だったため、結果が出たのは2006年のことでした。
全ての検証チームの判定は証明が正しいというものでした。
プレミアム懸賞問題の懸賞金
プレミアム検証問題を解決すると百万ドルの賞金が授与されることになっています。
それではペレルマンは、その賞金を手にしたのでしょうか?
懸賞金の条件
ミレニアム懸賞問題の賞金授与の条件に「査読つきの専門誌に掲載されること」というものがありました。
通常、論文はネットでプレプリントを発表した後に、査読つきの専門誌に投稿します。そして査読の結果掲載の価値があると判断された論文が紙面を飾ります。
プレミアム問題の解決のような重要な論文はこのルートを通るのが当然だと思われていたのです。
しかしペレルマンは論文をネットで公開しただけで、専門誌には投稿していないのです。数学界から身を引いているのですから専門誌に投稿するという数学者の行動はしたくなかったようです。
ペレルマンが異端だったために当たり前と思われていた専門誌への投稿がなされなかったのです。
実はペルルマンはポアンカレ予想の証明によって2006年にフィールズ賞(数学のノーベル賞のようなもの)を受賞したのですが、授賞式を欠席し授賞も辞退しています。
数学者でないのですから。
なんと頑固な人でしょう。
クレイ数学研究所の判断
クレイ数学研究所がペレルマンに賞金を授与するのかどうか、その判断に注目が集まりました。
議論の末、2010年にクレイ数学研究所はペレルマンに賞を与えることを決定しました。査読つきの専門誌への掲載という条件を緩和したのです。
それでめでたしめでたしとはなりません。
ペレルマンの判断
次に注目を集めたのは、はたしてペレルマンが懸賞金を受け取るのかどうかということです。
前述のとおり、ペレルマンはフィールズ賞も辞退しています。それならば懸賞金も受け取らないのではないかと思われたのです。
そして予想通りペレルマンは授賞式を欠席し、懸賞金の受け取りも拒否しました。
ペレルマンは数学から身を引いた身で、数学界とのかかわらないという考えを頑なに守ったのです。
その後もペレルマンは、人前にほとんど姿を見せない生活を送っているようです。