pHを知っていますか? 日本語では「水素イオン指数」と名付けられていますが、通常はpHをそのまま「ピーエイチ」または「ペーハー」と呼びます。
pHは水溶液の性質を表す重要な特性で、数字が小さくなるほど酸性が強く、数字が大きいほどアルカリ性が強いことを表しています。
このpHとは一体どんなものなのか、測定方法などを交えて簡単に説明してみます。
酸性とアルカリ性
水(H2O)はごく一部が水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH–)に分かれて存在しています。
この水に水素イオン(H+)を発生する物質を溶かすと水素イオンが過剰になります。このような溶液を酸性と呼びます。
逆に水酸化物イオン(OH–)を発生する物質を溶かすと水酸化物イオンが過剰になり、これをアルカリ性と呼びます。
水溶液が酸性かアルカリ性かによって、その性質も違ってきます。
水素イオン濃度
先に述べたように、水 ”H2O” は、一部が水素イオン “H+” と水酸化物イオン “OH–” に分離します。
水に水素イオンを発生する物質(酸)を溶かせば H+が増えますし、水酸化物イオンを発生する物質(アルカリ)を溶かせばOH– が増えます。
このとき水素イオンの濃度[H+](かっこは濃度を表す)と水酸化物イオンの濃度[OH–]をかけた値がほぼ一定になります。
濃度を1リットルあたりのモル数で表したとき、10-14という値です。
純粋な水の場合、[H+]と[OH–]は同じですから、それぞれ10-7モル/リットルということになります。水1リットルが約60モルなので、全水分子のうち6000万分の1が H+とOH– に分離しているという感じです。
これに酸を溶かせば H+が増えてOH– が減る、アルカリを溶かせば H+が減ってOH– が増えるということです。ここで水素イオン H+に着目すれば、酸では H+が増えて、アルカリではH+が減るということなので、水素イオンの濃度[H+]によって酸性、アルカリ性を表すことができます。
pH
pHは1909年にデンマークの生化学者”セーレン・セーレンセン”が提案したもので、水素イオン濃度そのものではなく、水素イオン濃度の逆数の対数で示したものです。といってもわかりにくいかもしれませんね。
pHが1小さくなると水素イオン濃度が10倍多くなるように決めた単位だと考えればいいでしょう。
中性ではpHは7、それより値が小さいほど酸性が強く、値が大きくなるほどアルカリ性が強いということを示します。
pHの測定方法
酸性かアルカリ性かを判断する方法としてよく知られているのがリトマス試験紙です。
青色のリトマス試験紙が赤く変化する溶液は酸性、赤色の試験紙が青く変化すると塩基性、どちらも変化しない場合は、中性です。
リトマス試験紙は酸性かアルカリ性かを簡便に判定できますが、pHそのものを測定することはできず酸性やアルカリ性の強さまではわかりません。
それでは、pHはどのように測定するのでしょうか?
pH試験紙
pH試験紙は通常緑色をしていますが、水溶液に浸漬したとき酸性が強いほど赤く変色します。またアルカリ性が強いほど青く変色します。
水溶液に漬けた後の色を色見本と比べることで簡易的にpHを測定することができます。
pHメーター
pHメーターは電気化学的にpHを測定するものです。
元々は水素電極(電極に白金を使い、水素を吹き込んだときの電極電位を測定)を使っていましたが、水素を吹き込むなど取り扱いが難しく、大掛かりな装置になってしまいました。
その後薄いガラスを使うことで、ガラスの両側での液体のpH差に応じて電位が変化することが見いだされ、それを使ったガラス電極式のpHが作られました。水素電極に比べ簡便で取り扱いやすいこともあって、現在市販されているpHメーターはガラス電極式です。
pHは水素イオン濃度ではない?
ここまで、水素イオン濃度からpHを解説してきました。しかし、pHメーターで実際に図っているのは水素イオン濃度ではなく、水素イオンの活量です。活量の詳細は別記事(活量、活量係数とは何なのか? 人為的に導入された不思議な特性)に書きましたが、簡単にいうと理想溶液と実在溶液との差を補正した濃度のようなものです。
水素イオン濃度が異なるとpHの電極電位は理論式に従って変動しますが、濃度を使った理論式は溶液がごく薄いときの近似にすぎません。それを全濃度で成り立つようにしたのが活量です。ですから実際に測定しているのは活量なのです。
そのため、JISなどではpHを水素イオン濃度ではなく活量で定義されています。