シミュレーション仮説という言葉を聞いたことがありますか?
私たちが暮らしている世界は、コンピューターシミュレーションに過ぎないというものです。
SFのような考えですが(SFではありふれた陳腐な発想です)、それに近いことを本気で考えている人たちもいます。
シミュレーション仮説とは
典型的なシミュレーション仮説とは次のようなものです。
- 宇宙があると知的生命体が多く発生する
- 知的生命体は科学を進化させて、そのうち宇宙のシミュレーションをする。
- シミュレーションの宇宙でも知的生命体が多く発生する
- シミュレーション内の知的生命体もシミュレーションを始める
- これを繰り返すと無数のシミュレーション宇宙が誕生する
- 我々の宇宙がシミュレーションではなくオリジナルである確率は限りなくゼロに近い
- よって我々の宇宙はシミュレーションだ
私たちは、シミュレーションの中の住人、バーチャルな存在であることが証明されました。
シミュレーション仮説の真偽
シミュレーション仮説に反対する人は大勢いて、宇宙がシミュレーションできない理由などを挙げています。
ただ、シミュレーション仮説を否定することはできません。
完全なシミュレーションは本物と区別できず、シミュレーションではないという証拠を見つけることはできないからです。
逆にシミュレーション仮説を信じて、それを証明しようとしている人はいます。
「シミュレーションなら、どこかにバグがあるはず」
「シミュレーションを作った人からのメッセージがあるはず」
と考えて探しているそうです。
※バグもメッセージも見つからなかったとしてもシミュレーションではないという証拠にはなりません。
デジタル物理学
最近、デジタル宇宙論、デジタル物理学と呼ばれるものが注目されています。
Wikipediaの「デジタル物理学」の項目を見てみましょう。
デジタル物理学(デジタルぶつりがく、英: digital physics)とは、「宇宙は本質的に情報により記述可能であり、それ故、計算可能である」という仮定によって導かれる、物理学及び宇宙論における理論的展望の総称である。このような仮定を立てるとき、宇宙は、コンピュータプログラムの出力、あるいはある種の巨大なデジタル計算デバイスとして理解される。
Wikipedia
「宇宙は情報によって記述可能」で「計算可能」だというものです。
デジタル物理学の歴史
デジタルコンピュータの先駆者として知られるドイツの技術者 ”コンラート・ツーゼ” が1969年に発表した著書で「宇宙自体がデジタルコンピューターである」という考えを示しました。
これがデジタル宇宙論の始まりです。
その後、量子情報の研究の進展や、ブラックホールの熱力学から始まったホログラフィック仮説など、宇宙を情報として捉える機運が高まっていきました。
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デジタル物理学の立場
デジタル物理学にも色々な立場があります。
最初に示したシミュレーション仮説のように「宇宙はシミュレーションである」というのが、一番極端な例です。
知的生命体が作ったかどうかは問わす、「宇宙は壮大なコンピュータである」という立場もあります。
一歩下がって「コンピューターだ」、「シミュレーション」だという部分には触れず、単に「宇宙はデジタルで計算可能である」という立場をとる人もいます。
そして、デジタルかどうかを問わず「宇宙は計算可能だ」とか「宇宙は情報でできている」という立場まで含めると、多くの物理学者が該当するようになります。
実在とは何か
これらの考えは「実在とは何か?」ということがキーポイントです。
物体が存在すると言ったとき「本当に物体が存在しているのか」それとも「物体がそこにあるという情報があるだけなのか」ということです。
現在の物理学では、「あるのは情報だけ」と考えた方が理解しやすい現象が多くみつかっています。
あくまでも、理解しやすいというでけで、本当かどうかは物理ではなく個人の信念や哲学の問題なのかもしれません。
実験などによって「科学的に証明」することができないのですから。
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