グラファイトシートは、放熱シートして使われている黒いシートです。
モバイル機器のCPUの放熱などに使われていて、現代のテクノロジーにはなくてはならない材料になっています。
最近ではグラファイトシート自体が市販されているので、実際に手にした人もいるかもしれません、
実はグラファイトシートが量産化されたのはつい最近のことなのです。
グラファイトシートとはどんなものか、その実力はどうなのか、その実態に迫ってみたいと思います。
グラファイトとは?
グラファイトは、黒鉛と呼ばれていたものです。
鉛という字が使われていますが、鉛が入っているわけではなく、炭素だけでできている物質です(昔は本当に鉛が含まれていると考えられていたそうです)。
黒鉛は、誰もが使ったことにある身近なものに利用されています。
鉛筆です。
鉛筆にも鉛という字が使われていますが、鉛は全く入っていません。
理由は説明するまでもないですね。
グラファイト自体は、古くから利用されてきたもので、それをシート状にしたものがグラファイトシートです。
グラファイトの構造
グラファイトは、炭素が亀の甲のように連なった平面が、層を作った構造をしています。
六角形で構成された平面は強い化学結合でつながっていますが、面と面の間は弱い分子間力(ファンデルワールス力)が働いているだけです。
そのため、面自体は丈夫ですが、面と面は簡単に剥がれる(劈開)という特徴があります。
鉛筆は、紙のとの摩擦力でグラファイトの面が剥がれて、紙に付着することを利用しているのです。
炭(カーボン)と黒鉛(グラファイト)
炭素でできている物質といえば、ダイヤモンドと炭(カーボン)を思い浮かべるのではないでしょうか?
炭は、木炭、石炭、活性炭など、色々な種類があり、古くから使われてきました。
ですから炭の素になるから炭素と呼びますし、英語でも炭素はそのままカーボンです。
カーボンは、不定形の炭素(規則正しく並んだ結晶ではない)で、グラファイトがぐちゃぐちゃになっているようなものです。
それに対して、規則正しい六角形で構成された平面が層をなした結晶状態のものをグラファイトと呼びます。
グラファイトは、電気や熱をよく伝えるという金属のような性質を持っています。
グラファイトをよく見ると、金属に似た光沢もあります。
これが、鉛が含まれている(金属成分が入っている)と思われた原因かもしれません。
グラファイトシートの製造
グラファイトは、通常は粉末です(鉛筆の芯は黒鉛の粉末を粘土と混ぜて焼き固めたものです)。
それを、シートや塊として製造する方法が長らく研究されてきました。
その方法のひとつとして、プラスチック(高分子)を高温で熱処理して作成することが研究されていましたが、大きなサイズのものが作れなかったため材料として実用化されることはありませんでした。
しかし、2000年を過ぎてから、高分子としてポリイミドと呼ばれるものを使い、それを3000℃以上という高温で処理することで、グラファイトのシートが製造されるようになりました。
グラファイトをシート状にすると、硬いものになるという常識でしたが、柔軟性を持ったシートにすることもできることがわかりました。
そこから、グラファイトシートが利用されてるようになったのです。
※参考1:https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/45980/19656_%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf
※参考2:https://www.jst.go.jp/seika/bt63-64.html
グラファイトシートの特徴は高熱伝導
グラファイトシートは、面方向への熱伝導率が非常に高く、銅などの金属よりも熱伝導に優れるという特徴があります(種類にもよりますが、銅の3倍の熱伝導性を持ったものもあります)。
温度の高いものをグラファイトシートに接触させると、熱がシートに沿って広がっていくのです。
そのため、コンピューターのCPU(中央処理装置)の発熱を周囲に逃がす放熱シートとして広く使われるようになりました。
特にファンを使わずに放熱させるモバイル機器には欠かせないものとなっています。
形状によって発生する特性
グラファイトは、昔から知られていた物質です。
しかし、粉末としてしか得られなかったため、鉛筆の芯や、潤滑剤(層がへき開して摩擦を小さくする)などの用途に留まっていました。
それが、シートとして製造できるようになったことで、現代のテクノロジーになくてはならない新材料として生まれ変わったのです。
カーボンシートのように物質の化学的な組成ではなく、形状を新しくすることで驚くような特性が現れる、そういった例もあるのです。