ビールや発泡酒に「プリン体オフ」と書かれているものがあります。
それを見ると「プリン体って身体に悪いものだ」と感じるかもしれません。
確かに、プリン体は痛風の原因になるものです。
でも、それだけではなく、生きていく上で重要な働きをしている大事な成分でもあるのです。
そのプリン体の秘密に迫ってみましょう。
また、痛風だった世界の偉人たち、プリン体の多い食べ物についても説明してみます。
プリン体とは?
上に示したのが、プリンと呼ばれる物質です(食べ物のプリンとは全く関係がありません)。
このプリンの構造を含んだ物質をプリン体と呼びます。
プリン体の例
プリン体は、生物が生きていく上で欠かせない物質です。
体内で色々な働きをしているのですが、特に重要な役割をふたつ紹介します。
遺伝情報
DNA(デオキシリボ核酸)は、生き物の遺伝情報を担う物質です。
細胞には必ずDNAが存在し、その情報を複製しながら細胞分裂を起こします。
その遺伝情報を担っているのは、アデニン 、グアニン 、チミン 、シトシン という4つの塩基で、その配列で情報を記録しているのです。
この中で、アデニン、グアニンのふたつはプリン構造を持ったプリン体です。
RNA(リボ核酸)にも、同様にアデニン、グアニンが含まれています。
エネルギー源
私たちが生きていくエネルギーの生成は、主にATP(アデノシン三リン酸)によるものです。
このATPもプリン体です。
プリン体がなければ、生きていくエネルギーを生み出すこともできません。
プリン体は、生物に欠かせない重要な物質なのです。
プリン体の影響
プリン体は、役目を終えると分解されて尿酸(下図)になります。
生成した尿酸は、体外に排出されます。
ただ、尿酸の生成と排出のバランスが崩れると、体内に尿酸が溜まっていきます。
血液内の尿酸量が増えていくと、尿酸が血液に溶けきれず結晶となって析出して、耐え難い激痛が走ります。
これが痛風です。
痛風は、風が吹いても痛いという症状から名付けられたもので、文字通り激痛を起こす病気です。
痛風は人間だけに発症する
尿酸を分解する尿酸酸化酵素という酵素があり、バクテリアから哺乳類までほとんどの生物がこの酵素を持っています。
しかし、人間は尿酸酸化酵素を作ることができません。
酵素を作る遺伝子は残っているのですが、それが働かないのです。
言ってみれば、痛風は尿酸酸化酵素を持たない人間(と一部の霊長類)だけに発生する特殊な病気だと言えるでしょう。
人間が尿酸を分解できないわけ
なぜ人間は尿酸酸化酵素を作り出す能力が欠損したのでしょう。
その理由はわかっていないのですが、2つの説を紹介しておきます。
ビタミン不足を補うため
尿酸は、活性酸素を除去できる抗酸化物質です。
そのため、ビタミンCなどの抗酸化物質が不足しても、尿酸で活性酸素を除去できるようにするためという説があります。
≫≫参考記事:活性酸素とは? 知っておきたい原理原則をわかりやすく説明してみる
知能を高めるため
面白い説(というより作り話に近い)ものとして、人間が知能を高めるために必要だったという話もあります。
歴史上の偉人(知能が高かったと思われる)の多くが、痛風に悩まされていたことから発想されたもので、他に根拠はありません。
痛風を患っていた偉人を、ざっと並べてみます。
”アレクサンダー大王”、”フビライ・ハン”、”ナポレオン・ボナパルト”、”レオナルド・ダヴィンチ”、”ミケランジェロ”、”マルティン・ルター”、”ガリレオ・ガリレイ”、”アイザック・ニュートン”、”ベンジャミン・フランクリン”、”チャールズ・ダーウィン”、”カール・マルクス”
そうそうたる面々です。
尿酸値が高めの人は、頭がいい証拠なのかもしれません。
プリン体の多い食べ物
食品・飲料中のプリン体含有量は、ネットで簡単に調べることができます。
例として、公益財団法人痛風財団の食品中のプリン体含有量一覧(PDF)へのリンクを貼っておきます。
核酸(DNAやRNA)に含まれていいるので、細胞数の多いものや、細胞分裂の盛んなレバーや白子などに特に多く含まれています。
アルコール飲料のプリン体含有量は少ないのですが、体内でアルコールを分解するときにプリン体が生成されます。
尿酸値の高い人は、アルコール飲料の中でも特にプリン体が多いビールや発泡酒を控えることが推奨されています。
なお、プリン体の摂取を控えても、体内で生成されるので意味がないという意見もありますが、そこは医師の判断に任せた方がよいでしょう。
美味しいものを食べたいからといって勝手な判断をして、激痛が襲ってきては大変ですから。