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スライムは液体か固体か? どう分類するのか考えてみる 

スライム

子供のころ触って遊んだスライム。ゲームでもポピュラーなキャラですが、このスライム、液体なのか固体なのか悩んだ人はいませんか?

そもそも液体と固体はどうやって区別するのでしょう?マヨネーズは? プリンは? 

ガムは? 粘土は? グミは? クリームは? 

悩んでしまうものが沢山あります。このような固体か液体かわからない物質たちの謎に迫っていきたいと思います。

できるだけ、わかりやすく簡単に説明していきます。

目次

液体と固体の一般的な分類

まずは、液体と固体の一般的な分類方法からみていきしょう。

液体とは何か?

こんなときは、Wikipediaさんに頼るのが一番です。さっそく液体の項目をみてみましょう。

液体(えきたい、英: liquid)は物質の三態(固体・液体・気体)の一つである。気体と同様に流動的で、容器に合わせて形を変える。

Wikipedia

液体は「流動的」「容器によって形を変える」ものだと書かれています。

確かに液体のイメージ通りです。これが一般的な液体の定義だと言っていいでしょう。

固体とは何か?

次に固体の項目もみてみましょう。

固体(こたい、英: solid)は物質の状態の一つ。固体内の原子は互いに強く結合しており、規則的な幾何学的格子状に並ぶ場合(金属や通常の氷などの結晶)と、不規則に並ぶ場合(ガラスなどのアモルファス)がある。

Wikipedia

なんだかむずかしいことが書いてあります。

液体の項目みたいに特性で表している部分はないか探してみると、

液体や気体と比較して、変形あるいは体積変化が非常に小さい。変形が全く起こらない剛体は理想化された固体の一つである。連続体力学においては、固体は静止状態においてもせん断応力の発生する物体と捉えられる。液体のように容器の形に合わせて流動することがなく、気体のように拡散して容器全体を占めることもない。

Wikipedia

という記述がありました。

「 液体のように容器の形に合わせて流動することがなく 」

これがポイントですね。

物質の三態

物質の三態とは、固体、液体、気体のことです。

純粋な物質では、結晶から液体へ、液体から気体へという相変化があります。

相変化する場合には、凝固熱、融解熱、気化熱、凝縮熱というように熱の発生や吸収があります。

この場合は、固体と液体の区別は簡単です。

実は、単独の物質でもアモルファスと言って、結晶ではないけど硬いものがあります(液体から温度を下げても凝固熱が発生しない)。

ガラスがその典型です。

物質の三態でいうならガラスは液体です。でも、感覚ではガラスは固体です。このように液体、固体の分類は簡単ではありません。

また、物質の三態は基本的に純粋な物質の話ですが、色々な物質が複合してできているものもあります。

これらのものを、固体、液体とわけることに無理があるのです。

物質の三態とは別の方法で固体と液体を区別するとしたら物性で分けるしかないのです。

スライムはどちらに入るのか

これを踏まえて、スライムはどちらに入るか考えてみます。

分類する基準は「容器に合わせて形を変えるかどうか」です。

スライムは、完全にではないですが、容器に合わせて形を変えるような気がします。

でもスライムにも色々あります。硬めのものは簡単に容器の形にはなりません。

さて、どちらでしょう。

他に分類法はないのか

「容器に合わせて形を変えるかどうか」というのは、表現があいまいできちんと区別するのは難しそうです。

そう言えば、Wikipediaでの液体の説明に「流動的」という表現もありました。

「気体と同様に流動的で」と書いてあります。

このような流動的な性質をもつ物質を流体と呼びます。

流体とは

またまた、Wikipediaさんのお世話になりましょう。

流体(りゅうたい、英: fluid)とは静止状態においてせん断応力が発生しない連続体の総称である[1]。大雑把に言えば固体でない連続体のことであり、物質の形態としては液体と気体およびプラズマが流体にあたる。

Wikipedia

「大雑把に言えば固体でない連続体のことであり」となっているので、 固体でないものを流体と呼ぶようです。

ということで、流体かどうかが固体と液体の分かれ目になりそうです。

流体の特性

Wikipediaには「流体とは静止状態においてせん断応力が発生しない連続体」と難しい言葉が書かれています。

これを簡単に言い換えると、流体とは「形を変えても元に戻らない」ものだということです。

そのかわり、形を変えるためには多少なりとも力が必要で、それが速いほど大きな力が必要です。

お風呂のお湯をかき混ぜるとき、ゆっくりかき混ぜるのには力はいりませんが、速くかき混ぜようとするとかなり力がいります。

気体の空気でも、うちわであおぐときに同じように力が必要です。

これが流体の大きな特徴です。

粘度というもの

「粘度」というと粘っこいものを想像してしまいますが、もともとは変形させる速さと力の関係を表すものです。

粘度が高いほど、同じ速さで変形させるのに大きな力が必要なのです。

粘度を持った物質を粘性体と呼ぶこともありますが、流体とほぼ同じ意味です。

固体の特徴は?

固体は「流体ではないもの」です。

流体が「形を変えても元に戻らない」ものなら、固体は「形を変えても元に戻る」ものだということになります。

固体は力をかけると変形しますが、その力をはずすと元の形に戻るのです。

この性質を弾性といいます。

スライムの性質は、粘性か弾性か?

この区別でいくと、スライムは形を変えても元に戻らないので、粘性体、流体です。

それなら、固体ではなく液体の仲間だということになります。

でも、本当にそれでいいのでしょうか?

ゼリーは粘性か弾性か?

ゼリー
ゼリー

ゼリーは柔らかく、ちょっと力をかけると変形します。

そして力をのぞくと、プルンという感じで元に戻ります。

ということは弾性体、固体だということになりますね。

粘土は粘性か弾性か?

粘土
粘土

粘土はどうでしょう。

凄く硬いものもあって、変形させるのに力が必要ですが、力をのぞいても元の形には戻りません。

ということは粘土は粘性体、液体だということになります。

スライムに戻る

こうやって考えるとスライムも迷ってしまいます。

ちょっとゼリーっぽいところもあるし、粘土っぽいところもあるからです。

そして硬めのスライムをちょんとつつけば跳ね返ってくることがあります。

これは元に戻ったことになるので、スライムは変形しても元に戻らないと言い切ることもできません。

粘弾性体というもの

実は、液体のような粘性と、固体のような弾性を併せもった物質は沢山あるのです。

これを粘弾性体と呼びます。

言ってみれば、液体と固体の中間の性質を持っているものです。

最初に挙げたマヨネーズやガムやグミやクリームも、この粘弾性体です(特に食品に多いですね)。

スライムも、その典型的なものと言ってもいいでしょう。

ということで、結論は「スライムは液体と固体のあいのこ」だということに決定しました。

液体と固体のあいのという中途半端

結局、スライムは液体と固体のあいのこという中途半端な結論になりました。

物質の状態で言えば、結晶になっているものが固体で、そうでないものが液体(か気体)と呼ぶのが理にかなっています。

物質の状態変化

液体が固体になる温度が凝固点で、この温度を境に液体が固体になり、そのときに凝固熱を発生する、これが一般的で、そのときの固体は結晶です。

そのような物質以外に、凝固点がなく、凝固熱も発生しないけども温度を下げると硬くなるものがあります。ガラスが代表例で、硬いけど結晶ではありません。一般的にはアモルファスと呼ばれる物質です。

結晶は定義から固体で間違いないのですが、アモルファスは物質の三態には当てはまらないので、固体と言い切ることができません。

その点でいえば、今まで挙げたものは全て液体です。

でも、「結晶になっているものが固体」と分類すると結晶ではないものは全て液体になってしまいます。

ちなみにガラスは結晶ではありません。他にもアモルファスと呼ばれる結晶ではないものが沢山あります。プラスチックにも結晶ではないものが多くあります。

でも「ガラスは固体ではなく液体」と言うのは感覚と合いません。

それなら結晶かどうかではなく、物性で分類するしかありません。

その分類でいえば、スライムはあいのこだという結論になってしまうのです。

実はこの「あいのこ問題」もう少し深く考えていくと「え? そんなものまであいのこ?」と少しびっくりするような結論になります。

それは、また改めて別記事で説明してみようと思います。

あわせて読みたい
物性でみる固体と液体 何もかも固体と液体のあいのこ? 以前の記事"スライムは液体か固体か? どう分類するのか考えてみる”で、スライムのように液体か固体か区別しにくいものを、物性で区別してみました。結論は「スライムは液体と固体のあいのこ」となったのですが、この分類方法をもう少し深く考えてみると、以外な結果になってしまいます。
スライム

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