レーヨンは絹のような光沢と柔軟性を併せ持った優雅な繊維です。
世界最初の人工繊維でもあり、長く愛されてきた素材でもあります。
このレーヨンとは、一体どのようなものなのでしょうか?
レーヨンの歴史や製法、特徴などをまとめましたので参考にして頂ければと思います。
レーヨンとは?
レーヨンを構成しているのは「セルロース」という物質です。
セルロースは、ブドウ糖(グルコース)が長くつながった構造をした植物の細胞壁や植物繊維を形作っているものです。
紙の原料であるパルプを思い浮かべてもらえばわかりやすいでしょう。
≫≫セルロースとは? 生活に欠かせない植物が生んだ万能材料を簡単に説明
このセルロースを人工的に繊維状にしたものがレーヨンです。
最初のレーヨンは欠陥品だった?
セルロースにニトロ化という化学処理をすると、ニトロセルロースという物質になります。
このニトロセルロースを溶媒に溶かし、細い孔から押し出すことで繊維を作ることができます。
世界最初にレーヨンと呼ばれたのは、このニトロセルロース繊維でした(1855年にフランスのイレール・ド・シャルドネが「レーヨン」として特許取得)。
絹のような光沢を持った繊維でしたが、大きな欠点がありました。
それは「燃えやすい」こと。
ニトロセルロースを原料としたセルロイドが燃えやすいのと同じ特性です。
≫≫セルロイドとは何か? 世界最初のプラスチックの特徴と歴史をわかりやすく
そのため、レーヨンのドレスを着た人が舞台の上で火だるまになるという悲惨な事故も起きています。
そのため、燃えやすいニトロセルロースではなく、セルロースそのものを繊維にするよう開発が進みました。
レーヨンの製造法
こうして、ニトロ化していないセルロースを繊維化したレーヨンが開発されました。
そのレーヨンの製造法として、「銅アンモニア法」と「ビスコース法」があります。
それぞれについて、別記事”セルロイドとは何か? 世界最初のプラスチックの特徴と歴史をわかりやすく”から引用します。
銅アンモニア法
セルロースを溶かす液体はほとんどありませんが、「銅アンモニア溶液(シュバイツァー試薬)」と呼ばれる液体には溶けるので、それを利用して繊維やフィルムにすることができます。
https://tbits.jp/cellulose/
ビスコース法
セルロースそのままでは溶けないので化学反応で「ビスコース」と呼ばれる物質に変えて、繊維やフィルムにした後、ビスコースをもう一度セルロースに戻すという方法もあります。
https://tbits.jp/cellulose/
主に使われているのは「ビスコース法」です。
日本でも盛んに製造され、三菱レイヨン、東レ(東洋レーヨン)、クラレ(倉敷レイヨン)、レーヨンの日本訳「人造絹糸」を関した帝人(帝国人造絹絲)など多くの有名企業の名前に当時の名残が残っています。
レーヨンの特徴
レーヨンの特徴は、何といっても光沢と柔らかさです。絹のような優雅さがあります。
そして吸湿性にも優れており、肌触りもよいという特徴もあります。成分が木綿や紙と同じセルロースですから、吸湿性があるのも納得です。
また、原料が自然素材であり、生分解性もあることから、近年ではサステナビリティの面でも注目されています。
欠点としては、合成繊維に比べて強度が弱い、特に水に弱いことが挙げられます。紙と同じ成分だと考えればわかりやすいでしょう。
そのため、水に濡れると弱くなり、しわになりやすく、縮みやすいのです。
ですからレーヨンの取り扱いはデリケートで、水洗いはできるだけ避けて(しても手洗いまで)基本的にはドライクリーニングにすることが必要です。
このように取り扱いが難しいにもかかわらず、世界最初の人工繊維がいまだに愛され続けているのは不思議な気もしますが、それだけ魅力的な繊維だということでしょう。