「自然科学の進歩はすさまじく、わからないことなんてほとんどない」
そのように思っているのか、自然科学に関しての問いには明確な答えを期待している人が多いように思えます。
人間関係、政治、経済、ビジネスなどには、明確な答えはありません。
でも自然科学には「はっきりした答えがあるはず」と思い込んでいる気がするのです。
その期待に応えるために、ネットでの科学的な説明は答えをはっきり示そうとする傾向があります。
でも「わからないものはわからないでいいじゃないか」というのが私のスタンスです。
というよりも「自然科学でも、まだわからないことがある」ことを積極的に前にだして、誤解をときたいと考えています。
自然科学に答えはあるのか?
理系の分野は、正解、不正解という答えがはっきりしていると思っている人も多いかもしれません。
確かに人文系の学問に比べると、自然科学は答えがわかりやすいのも事実です。
それは「再現性のある実験ができること」が大きな要因です。
ただ、実験は明らかな間違いを排除できるだけで、納得する答えを教えてくれるものではありません。
身の回りにもわからないことがある
このブログでは、まだ明確にわかっていないことを、わかっているかのように書くのは避けようと考えています。
これまでの書いてきた記事も、その考えに則っているので、少し例を示します。
光触媒の仕組みと原理
”光触媒とは何か?効果や原理をわかりやすく説明してみた”という記事で、光触媒の説明をしています。
その記事の最後はこのような文章で終わっています。
しかし、似たような物質の中で、なぜ酸化チタンだけがこのような性質を持っているのか、まだまだ謎も多いのも事実なのです。
今後の研究で、その要因が明らかになっていけば、より高い光触媒機能を持った材料の開発にもつながっていくでしょう。
光触媒に関して「まだまだ謎も多いのも事実」とあえて書きました。
光触媒として使われている酸化チタンの半導体としての特性を説明し、エネルギー準位がどうのこうのといった説明をすることはできます。
それで大部分は説明可能です。
でも、その大部分の説明をせず(難しいので避けたのですが)、まだわかっていないことの方を優先しました。
また、この記事で触れた酸化チタンが持つ「超親水性」については、わからないことが多いのですが、こちらはメインの話から逸れるので触れていません。
土星の環について
”気体の分子運動論は土星の環の研究から始まった?”という記事で、土星の環について触れました。
そして、土星の環が何でできているのか解決したマクスウェルの説明もしています。
ただ、これだけで終わるのはやめて、わざわざ次のような注釈をつけています。
実は土星の環の謎はここで終わったのではありません。その後詳しい構造がわかってきて新たな謎が生まれてきました。
今でも完全に説明しきれたとは言えない謎に満ちた存在なのです。
土星の環がどうなっているのか、大枠ではわかっています。
しかし土星の環は複雑な構造をしていて、全てが完全にわかっているわけではないのであえて注釈をいれたのです。
誰もが納得できる答えなんてない
自然科学はすでに「誰にでもわかるような説明」ができる範囲を超えています。
身の回りのちょっとしたことでも「量子力学」という摩訶不思議な理論をつかわなければ説明できません。
自分自身、量子力学を理解しているかと言えば、NOと答えるしかありません。
普通の言語では追い付かないので、数学を使って表現するしかないのですが、それでも納得して理解したという境地に達することは難しいのです。
せいぜい、色々数式をいじっているうちに「腑に落ちる」ということがある、その程度です。
このブログでは「現代科学でも、まだそんなこともわからないのか!」という驚きの方を優先して、科学万能という誤解をといていきたいと思っています。