「光触媒」という言葉、よく耳にしますよね。
光触媒を使ったグッズも数多く販売されていて、かなり身近なものになってきました、
でも、光触媒とは一体どんなもので、どんな効果があるのか、わからない人もいるのではないでしょうか?
光触媒を謳った商品が、本当に効果があるのか確認するためにも、ある程度の知識はあった方がいいでしょう。
そこで、光触媒とは何か? どんな機能や効果があるのか、簡単に説明してみます。
光触媒とはどんなものなのか?
まずは、光触媒とは何なのか説明しますが、いきなり光触媒に入る前に「触媒」とは何かというところから入っていきたいと思います。
触媒とは何か?
触媒(しょくばい)とは、一般に、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう
触媒というのは、化学反応の反応速度を速める効果を持った物質のことです。
触媒自身は反応で消費されることがないので、ずっと使い続けることができます。
車の排ガス処理などに使わているほか、身の回りにある化学製品を製造するために沢山の触媒が使われています。
詳しくは別記事で説明しているので、興味がある方はそちらを参照してください。
光触媒とは? 普通の触媒と何が違うのか
光触媒(ひかりしょくばい、英: photocatalyst)は、光を照射することにより触媒作用を示す物質の総称である。また、光触媒作用は光化学反応の一種と定義される。
Wikipedia
光触媒は、光が当たっているときに触媒として働く物質のことです。
光触媒という言葉から「光が触媒になっている」と誤解されることがありますが、光は光触媒を活性化するために必要なもので光自身は触媒ではありません。
「光触媒とは光を当てることで化学反応を促進させるもの」
ということになります。
光触媒のような光化学反応としてよく知られているものに、植物の光合成があります。
広い意味でいえば、光合成をする葉緑素も光触媒の一種ということです。
光触媒の代表は酸化チタンという物質
「光触媒」といえるものは色々ありますが、現在実用化されているものは、ほぼ「酸化チタン」という物質だけです。
ですから、通常「光触媒」と呼ぶときは「酸化チタン」の指すと思って問題ありません。
チタンは軽くて丈夫な金属で、ゴルフクラブや眼鏡フレームなどによく使われて入るものです。
そのチタンと酸素が結合した物質、それが酸化チタンです。
酸化チタンそのものは、新しく知られた物質ではなく、昔から色々な用途に使われていました。
酸化チタンの光触媒作用
酸化チタンに光(紫外線)を当てると、酸化反応と呼ばれる反応を促進するという作用を示します。
これが光触媒作用です。
酸化反応というのは、酸素と結合させる反応で「燃焼」が酸化に当たります。
光を当てると、酸化チタンの表面についた物質が燃えると考えてもいいでしょう。
普通の燃焼よりも反応が遅いので温度が上がることもなく、室温のままで燃えたときと同じ反応が起きるのです。
ですから、燃えるものなら、ほとんど何でも光触媒で酸化分解できます。
酸化チタンの従来の用途
酸化チタンは真っ白な物質で、毒性はほとんどありません。
そのため、昔から着色料、顔料、絵の具などに使われていました。
でも純粋な酸化チタンには大きな欠点がありました。
「光(紫外線)が当たると、周囲のものを分解してしまう」
という欠点です。
塗料を白くするために酸化チタンを混ぜると、塗料を分解してボロボロにしてしまうのです。
そのため、着色用の酸化チタンは表面をコーティングして、塗料などと直接接触しないよう工夫をして分解を抑えてます。
光触媒以外の用途で市販されている酸化チタンの多くは、光触媒効果をなくすような処理をされているのです。
光触媒としての利用
これを逆手にとったのが、光触媒としての用途です。
燃えるものなら何でも分解してくれます。
油などの汚れ、細菌やウィルス、空気中の有害有機物質、においの元、何でもOKです。
大量に処理することはできませんが、微量のものを少しずつ分解していくことができるので、用途が大きく広がっています。
光触媒の外装材としての利用
光触媒の用途の中で、一番多いのは外装材でしょう。
酸化チタンをコーティングしたタイルやガラスなどは、自然に汚れを分解してくれるので、公共施設にも広く利用されています。
※記事最初の画像は、光触媒ガラスを使っている中部国際空港(セントレア)の写真です。
光触媒塗料としての用途
光触媒塗料で塗装することで、タイルなどには及ばないものの、浄化機能を持たせることができます。
前で説明した通り、光触媒の効果を持った酸化チタンは塗料を分解してしまいます。
分解されないような丈夫な塗料でなければ使い物になりません。
そのため、高価なフッ素系の樹脂などを使用しているため、塗料自体も高くなってしまいます。
また、付着物と接触していて光が当たる塗料の表面に光触媒が露出していないと効果が出ません。
下手な光触媒塗料や塗装方法を使うと、表面が塗料に覆われてしまって充分な効果が発揮できないことがあります。
外装ではなく、室内に光触媒塗料を塗ることもありますが、価格の割に効果が薄いので個人的におすすめしません。
光触媒空気清浄機
光触媒を使った空気清浄機も色々販売されています。
空気中の有害化学物質や細菌、ウィルスなどを光触媒の効果で分解するというものです。
空気清浄機に光触媒と紫外線発生装置を組み込んでいるのですが、ただ組み込めば効果が現れるという単純なものではありません。
光触媒での分解反応は、「光触媒に接しているもの」が「時間をかけて」分解していくというものです。
空気中にある分解させたい成分を、どうやって光触媒に接触させて、どうやって接触している時間を長くするのか、そこが重要なポイントです。
光触媒空気清浄機は、色々な会社から発売されていますが、ほとんど効果がないものもあるので気を付けて下さい。
※個人的には光触媒空気清浄機を利用することはありません。効果が小さいと思っていますので。
光触媒人工観葉植物
最近、流行しているのが、光触媒加工をした人工観葉植物です。
前述したように、光触媒は、細菌やウィルス、空気中の有害有機物質、においの元などを少しずつ分解してくれます。
その効果を期待して、光触媒を室内に設置するのですが、光触媒加工したものを観葉植物の形にすることで、癒しの効果も同時に楽しめるものです。
とは言っても過度な期待はしないでください。
これは室内への光触媒塗料の塗装と同じですが、効果がごく限定的なものになります。
理由はふたつあります。
ひとつ目は、太陽光に直接さらされる屋外とは違い、室内では紫外線がほとんどあたらないということです。
LED照明は紫外線はほとんど放射しませんし、蛍光灯の紫外線も太陽光に比べるとわずかです。
室外から日光を取り入れても、ガラスに紫外線カットを施していると室内には紫外線はほとんど入ってきません。
ふたつ目は、光触媒は表面に付着したものしか分解しないということです。
たまたま表面に付着したものしか分解できません。
ですから、効果はかなり限定的なものになります。
酸化チタンの変わった性質「超親水性」
酸化チタンは、光を当てると水に濡れやすくなる「超親水性」という変わった性質があります。
水をほとんどはじくことがなく、均一に濡れた状態になるのです。
そのため、表面に付着した分解物が、雨などの水で簡単に剥がれ落ちるという効果があります。
またガラスや鏡に使うと曇らないので、自動車のドアミラーなどにも採用されています。
非常に面白い性質で用途もありそうな気がしますが、光触媒効果ほど話題になっていないのは残念に思います。
酸化チタンには、なぜこんな性質があるのか?
酸化チタンは、なぜ「光触媒効果」という特殊な性質を持っているのでしょうか?
酸化チタンが半導体であること、半導体としての特性(バンドギャップ)が、光触媒に適していることが大きな要因です。
しかし、似たような物質の中で、なぜ酸化チタンだけがこのような性質を持っているのか、まだまだ謎も多いのも事実なのです。
ヒドロキシラジカルなどの活性酸素が関与していることは間違いないのですが、詳細なメカニズムまで解明されたとは言えない状況です。
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今後の研究で、その要因が明らかになっていけば、より高い光触媒機能を持った材料の開発にもつながっていくでしょう。
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