2019年のノーベル化学賞は、旭化成名誉フェローの吉野彰さんたち3人に対して贈られました。
受賞対象は「リチウムイオン電池の開発」
個人的に、めちゃくちゃ感慨深いことで、受賞を知ってすぐに「記事にしよう」と思いました。
でも、想いが強すぎて、上手く記事にすることができないでいます。
「まとまらなくてもいい」
そう開き直って想いをそのまま文章にしてみました。
リチウムイオン電池の開発の概要
今回のノーベル化学賞受賞者は、スタンリー・ウッティンガム氏、ジョン・グッドナイフ氏、そして吉野彰氏の3人です。
リチウムイオン電池に限らず電池には、正極と負極があります。
それを踏まえて、今回の受賞対象の研究の歴史を簡単に書いてみました。
- 1970年代にウッティンガム氏が金属リチウムを正極に使ったリチウム電池を開発
- 1980年代初頭にグッドナイフ氏がコバルト酸リチウムを正極にすることで安全性を高める
- 1985年から吉野彰氏が負極に炭素材料を使ったリチウムイオン二次電池の原型を開発
そして、今ではリチウムイオン二次電池は、モバイル機器、パソコン、EVなど、私たちの生活に欠かせないものになっています。
自分の学生時代の研究
ちょっと自分自身の経歴を語ります。
自分は1986年に大学4年生で研究室に配属され、1988年に修士課程を終えるまで、大学で研究をしていました。
そのときの研究テーマが「リチウムイオン電池の負極材料の開発」だったのです。
この記事を書くにあたって特許を調べてみましたが、吉野さんの炭素系材料を使った電池の出願は1986年に集中していました。
同時期に同じ分野の研究をしていたのです。
その業績でノーベル賞を受賞されるなんて……
個人的に想い入れが強い理由、わかってもらえたでしょうか?
2000年に白川先生たちが導電性高分子の開発でノーベル化学賞を受賞したときも飛び上がって喜んだことを思い出します。
吉野さんも、白川先生が開発したポリアセチレンを使って研究をされていましたし、自分自身も導電性高分子系の材料を研究していました。
でも、今回の方が嬉しく感じるのは、研究時期が同じだったためでしょうか?
工学的、産業的な業績
もうひとつ感慨深いのは、化学会社での研究成果だったことです。
自分自身、化学会社で30年研究開発を行っているので、その成果が認められるのは非常に嬉しいことです。
正極材料のコバルト酸リチウムは、すでに開発されていました。
負極に利用した炭素材料も社内で作られていたものでした。
それらを組み合わせ、安全性を高めるための独自の工夫を付け加え、実用的な電池の構成を示したのが吉野さんの成果です。
このような研究は、アカデミックな研究に比べて一段下に見られる風潮がありました。
でも工業的な研究にも独創性のある大きなブレークスルーが沢山必要です。
それをまっとうに評価されたことが、産業界に身を置くものとして本当に嬉しく感じるのです。
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