素晴らしい功績を残した人に贈られるノーベル賞。
毎年、ノーベル賞受賞者の発表時には大きなニュースになっています。
このノーベル賞、一体どんなもので、どのように決められ、どのくらいの賞金がもらえるのか、気になる人も多いのではないでしょうか?
そこで、ノーベル賞について総まとめしてみました。
ノーベルってどんな人
ノーベル賞の元になった”アルフレッド・ベルンハルド・ノーベル” は19世紀に活躍したスウェーデンの化学者で、同時に発明家、実業家でもあります。
父親の ”イマヌエル・ノーベル” も発明家、事業家で、機械や爆発物の製造をして、クリミア戦争で大儲けをしたそうです(戦争終了後に破産)。
このような父親のもと、ノーベルは小さい頃から複数の家庭教師から化学を学び発明家の道を歩みます。
ノーベルの興味は爆発物
ノーベルは爆発物の研究に打ち込み、その中でも「ニトログリセリン」という物質の安全な製造法や利用法を研究しました。
ニトログリセリンは液状の物質で、血管拡張作用があるので狭心症の薬としても使われています。
しかし、その一番の特徴は爆発力です。
ニトログリセリンは、ちょっとした衝撃や摩擦で大爆発を起こすので、製造や取り扱いが非常に難しいものでした。
ノーベル最大の発明「ダイナマイト」
ノーベルは、ニトログリセリンを珪藻土に浸み込ませることで安全性を高めました。
そして、雷管を発明して狙った通りに爆発させることができるダイナマイトを発明します。
珪藻土は小さな穴がたくさん空いているので、その穴にニトログリセリンを浸みこませたのです。
このことは別記事「珪藻土の構造と吸水する原理や仕組みを簡単に説明してみる」でも紹介しているので、興味があれば読んでください。
ノーベルは、自分で発明したダイナマイトの製造、販売を始めます。
ダイナマイトは世界中の工事現場で使われるようになり、工場も100近くも建てたそうです。
そして、ノーベルは大富豪となったのです。
≫≫ダイナマイトとは? ニトログリセリンの欠点を解消したノーベルの工夫
その後、珪藻土のかわりに、それ自身も爆発力をもったニトロセルロースを使ってさらに爆発の威力を高めたものを発明しました。
ノーベルの晩年
ノーベルは死の1年前に遺言をのこしました。
その遺言は、下のようなものでした。
「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。私の遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に分配されるものとする」
Wikipedia
これが、ノーベル賞の始まりです。
ノーベル賞とは何か?
このノーベルの意思を継いで、1900年にスウェーデン国王オスカル2世によってノーベル財団の設立法令が公布されました。
ノーベル賞には、次の5つの部門があります。
- 物理学賞
- 化学賞
- 生理学・医学賞
- 文学賞
- 平和賞
後に経済学賞も創設されましたが、正式にはアルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞と呼ばれ、厳密にはノーベル賞とは違うものです。
ノーベル賞の選考は誰がやっているのか
ノーベル賞はどんな機関が選考しているのか、一覧で示します。
- 物理学賞、化学賞:スウェーデン王立科学アカデミー
- 生理学・医学賞:カロリンスカ研究所(スウェーデン)
- 平和賞:ノルウェー・ノーベル委員会
- 文学賞:スウェーデン・アカデミー
平和賞だけノルウェーで、他はスウェーデンで選考されることになっています。
ノーベル平和賞がノルウェーになっている理由
なぜノーベル平和賞は、ノーベルが生まれたスウェーデンではなくノルウェーで決められているのでしょう。
各賞の選考機関はノーベル財団設立時に決められていました。
当時のノルウェーはスウェーデンの一部だったので、選考機関を選ぶときにノルウェーの機関も対象になっていたのです。
※実質的には、スウェーデンとノルウェーは対等に近い立場で、スウェーデン国王がノルウェー国王も兼ねるという同君連合という形だったようです。
ノーベル賞設立後、まもなくして同君連合が解消され、ノルウェーは独立国家となりました。
今でも、ノーベル平和賞の授与式はノルウェーのオスロ市庁舎でで行われています(他はスウェーデン、ストックホルムのコンサートホール)。
ノーベル賞の賞金はどこから出るのか
ノーベル賞の賞金はノーベルの遺産をノーベル財団が運用して、その利子を受賞者に分配しています。
ノーベルの遺言どおりです。
ただ、遺言では「安全な有価証券に投資し」となっています。
設立当初は利子も高くそれなりの賞金が払えていましたが、利子が小さくなるにつれて賞金も減っていったそうです。
その後、ノーベル財団が非課税になり、株式の投資もできるようになったので、賞金額も増えていきました。
ノーベル賞の賞金額はいくらなのか
さて、その賞金ですが、一体どのくらいなのでしょうか?
ノーベル財団の運用益次第となりますが、2000年以降は800万から1000万スウェーデン・クローナの間で変化しています。
日本円にすると1億円くらいです。
なんとなく、そのくらいが相応しいと思える金額ではないでしょうか?
ただ、同時受賞の場合は、その人数で分配しなければなりません。
2018年には本庶教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されましたが、ジェームズ・アリソン教授との同時受賞なので、ふたりで分配することになります。
ちなみに俗なことではありますが、日本ではノーベル賞の賞金は非課税です。
日本人のノーベル賞受賞者
最後に日本人(受賞時に日本国籍)のノーベル賞受賞者24名の一覧を示します。
偉大な方々には申し訳ありませんが、敬称略で紹介させていただきます。
ノーベル物理学賞
1949年 | 湯川秀樹 |
1965年 | 朝永振一郎 |
1973年 | 江崎玲於奈 |
2002年 | 小柴昌俊 |
2008年 | 小林誠 益川敏英 |
2014年 | 赤崎勇 天野浩 |
2015年 | 梶田隆章 |
ノーベル化学賞
1981年 | 福井謙一 |
2000年 | 白川英樹 |
2001年 | 野依良治 |
2002年 | 田中耕一 |
2008年 | 下村脩 |
2010年 | 根岸英一 鈴木章 |
ノーベル生理学・医学賞
1987年 | 利根川進 |
2012年 | 山中伸弥 |
2015年 | 大村智 |
2016年 | 大隅良典 |
2018年 | 本庶佑 |
ノーベル文学賞
1968年 | 川端康成 |
1994年 | 大江健三郎 |
ノーベル平和賞
1974年 | 佐藤栄作 |
24人の受賞者のうちの7割、17人が平成での受賞者です。
さて、令和では何人の受賞者が出ることでしょう。
2019年10月10日追記
令和初の日本人ノーベル賞受賞者は、旭化成名誉フェロー吉野彰氏でした
リチウムイオン電池の開発に対して贈られたノーベル化学賞です!