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絶対温度とは何? それ以上下げられない究極の低温の秘密

温度計

絶対温度……私たちがいつも使っている℃で表される摂氏温度(セルシウス温度)とはちがい、K(ケルビン)という単位で表される温度です。

普段は使わない絶対温度。これは一体どんなものなのでしょうか。

簡単でありきたりな説明だけではなく、ちょっと踏み込んだところまで説明してみます。

目次

絶対温度とは

絶対温度というのは、これ以上温度を下げることができない絶対零度を0としてあらわした温度です。

ですから絶対温度にマイナスの温度はありません。

温度の目盛間隔は、摂氏温度と同じ(温度差1℃は温度差1K)ようにつけられています。

0Kは、−273.15 ℃で、私たちの周囲の気温は300Kくらいになります。

絶対零度の簡単な説明

絶対零度(0K)というのは、最初に言ったように「それ以上温度を下げることができない温度」のことです。

なぜ、絶対零度よりも温度を下げることができないか、この質問に対してよくある説明を挙げてみます。

理想気体の状態方程式からの説明

理想気体の状態方程式は

  PV=nRT

(P:圧力、V:体積、n:気体のモル数、R:気体定数、T:絶対温度)

で表されます。

この式から、絶対温度Tが0Kになると圧力か体積がゼロになることがわかります。

圧力も体積もマイナスの値はない(0が最低)なので、絶対温度も0Kが最低になります。

分子の運動による説明

理想気体の状態方程式を分子の運動という立場でいうと、絶対温度は分子の運動エネルギーに比例するものと説明できます。

ですから、絶対零度では分子の運動エネルギーがゼロになる温度ということもできます。

エネルギーもゼロが最低なので、これ以上温度を下げることができません。

この説明でいいのか?

ちなみに自分は天邪鬼なので、上に書いたような説明にはケチをつけたくなります。

何となくわかったつもりにさせる説明だからです。

理想気体は実在しないものですが、モデルが簡単なので物理では便利に使われてます。

でも、ごく低温になるとそうはいきません。

実際には絶対零度まで気体のままでいられる物質はありませんし、もし存在したとしても低温の挙動は違ってくることが理論的にわかっています。

それなのに、理想気体の体積がゼロになるとか、運動エネルギーがゼロになるとか、低温まで拡大解釈して説明するという方法を採りたくないのです。

絶対零度の簡単な説明の問題点

絶対零度について簡単な説明をしてきましたが、間違いだとは言えないものの、大きな問題点もあります。

もし理想気体があったとしたら

もし理想気体があったとしましょう。

分子同士には何の相互作用もなく、分子の大きさが0であれば理想気体とみなすことができるので、そういった物質が実際にあると仮定するのです。

そうすれば、

  1. 絶対温度で圧力、体積がゼロになる
  2. 絶対零度で運動エネルギーがゼロになる

というのは正しいかもしれません。

でも他の物質はどうでしょうか?

理想気体以外の実在する物質でも、絶対零度より低い温度にならないという理由はありません。

運動エネルギーがゼロになるという意味

理想気体の場合、エネルギーは分子が運動(直進運動)する運動エネルギー以外にエネルギーはありません(単原子理想気体の場合と言う場合もありますが、今は大きさゼロで内部構造を持たない理想気体を考えています)。

その運動エネルギーは温度に比例します。

そこから、絶対零度では運動エネルギーがゼロになるという説明が生まれたのでしょう。

でも実際の物質は、それ以外にも色々なエネルギーを持っています。

その場合、古典統計力学という理論では「全てのエネルギーが絶対温度に比例する」とされてます。

エネルギーの種類(自由度)ひとつあたり、$\frac{1}{2}kT$(k:ボルツマン定数、T:絶対温度)のエネルギーを持つのです。

運動エネルギーも位置エネルギーも関係ありません。

運動エネルギーも直進だけでなく、回転や振動のエネルギーもあります。

古典統計力学が提唱されたときには知られていませんでしたが、分子、原子には内部構造があり、それに伴うエネルギーもあります。

絶対零度でエネルギーがゼロと主張する場合、この古典統計力学を根拠にしなければなりません。

実際に絶対零度でエネルギーはゼロなのか?

実際に絶対零度でエネルギーは全てのゼロなのでしょうか?

答えはNoです。

$\frac{1}{2}kT$に当てはめると、何千度、何万度……という温度に相当するエネルギーを持ったモードもあるくらいです。

これは、量子力学が誕生して初めて理論付けることができるようになりました。

※物質のエネルギーを絶対零度でゼロと置くと便利な場合があります。その場合と、絶対零度で本当にエネルギーがゼロなのかというのは別問題です。

当時の科学者はどうだったのか

理想気体の状態方程式が発見されたあと「約-270℃が温度の下限ではないか」と主張した科学者たちがいました。

でも、あくまでも主張です。

「状態方程式がPV=nRTだからTが一番低い温度だ」

と信じ込むほど、当時の科学者も単純ではありません。

温度とは何か? 熱とは何か? と考え続け、実験で確認しながら理論を作っていったのです。

古典統計力学を作った人たちは?

古典統計力学は、主に “ルートヴィッヒ・ボルツマン” という物理学者が中心になって作られました。

≫ルートヴィッヒ・ボルツマン 早すぎた天才科学者の生涯

ただし、古典統計力学を作っていった当時の人たちもごく低温では理論が破綻する(現実と合わない)」ことを知っていました。

それでも、古典統計力学は様々な現象を説明できる理論で、物理現象の解明に大きく寄与しました。

古典統計力学は未完成だったと言っていいかと思います。

理論の骨子は正しいけれども、全ての現象を説明するには足りない部分がある、そう捉えられていたのではないでしょうか?

結局、量子力学が足りない部分を埋めることになりました。

逆に言えば、量子力学が誕生するよりも前に、骨子を見つけ出したボルツマンが、時代を先取りしすぎていたのかもしれません。

あらためて絶対零度とは何か?

冷たい温度計

「絶対零度とは何か?」

と聞かれれば答えはひとつです。記事の最初から答えを書いています。

「それ以上温度を下げることができない温度」

これが絶対零度です。

なぜそれ以上温度を下げることができないのか?

では、なぜ絶対零度より温度を下げることができないのでしょうか?

簡単に説明してみます。

物質が何らかの変化を起こすとき、発熱する場合と吸熱する場合があります。

吸熱すると温度が下がります。

ですから、温度を下げるには吸熱変化を起こしてやればいいということになります。

色々な吸熱変化をみてみると、どの場合にも「これ以上は吸熱できない」という最大の吸熱量が決まっています。

そして、その最大の吸熱量は温度によって変わり、最大吸熱量と絶対温度が比例することがわかりました。

ですから、絶対温度では吸熱変化は起こせないので、それ以上温度を下げることはできないのです。

ちょっと腑に落ちない説明かもしれません。でも仕方がありません。

絶対温度は熱力学的温度と呼ばれるもので定義されています。

簡単に言えば「最大の吸熱量と比例するもの」「絶対温度」で、「最大の吸熱量がゼロになる場合」「絶対零度」と呼ぶ、そう決められているのです。

「絶対零度より温度を下げることができない」というのは、物理の基本法則のひとつになっています。

基本法則は、それ以上詮索のしようがありません。

それより先は「自然がそうなっているから」と答えるしかないのです。

熱力学温度

熱力学温度が見つかるまで、科学者は「温度」とどう定義すればいいのかわからず悩んでいました。
摂氏温度はすでに使われていましたが、水銀を使った温度計で決められていたので「水銀の体積変化」で温度を定義していたことになります。
このように特定の物質に頼らない定義が求められていたのです。
ちなみに、上で説明した「熱力学温度」の定義は、簡単な説明で不十分なので気をつけてください。

エネルギーから考えてみる

「絶対零度ではエネルギーがゼロになるから、それ以下の温度はない」という説明は、わかりやすくて魅力的です。

このような形で絶対零度をエネルギーで説明することはできないでしょうか?

ひとつ言えるのは「絶対零度では物質のエネルギーが極小になる」ということです。

エネルギーは持っているけれども、それ以上エネルギーを下げることができない状態です。

古典統計力学では、エネルギーの種類(自由度)ひとつあたり、$\frac{1}{2}kT$のエネルギーを持つのでした。

これを使えば、絶対零度では「エネルギーの自由度がゼロ」ということもできます。

絶対零度では、全ての種類のエネルギーが変化できない状態になっている、だからそれ以上エネルギーを下げることができない、これも絶対零度より温度を下げられない説明になるかもしれません。


温度計

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