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レアメタルとは何か? レアメタルの種類、用途、問題点をわかりやすく

レアメタル
Shutterstock

最近よく話題になっているレアメタル。

レアメタルとは、一体どんなもので、何が問題になっているのでしょうか。

そんなレアメタルの種類や用途、問題点について簡単に説明してみます。

目次

レアメタルとは? 何種類の金属がレアメタルと呼ばれているのか

レアメタルとは「希少金属」という意味になります。

「意味になります」と回りくどい言い方をしたのは、「レアメタル」が和製英語だからです。

英語では ”minor metal” マイナーメタルと呼ばれています。

名前の通りメジャーではない金属のことを差すのですが、レアメタルと呼ばれる物質は一体何種類くらいあるのでしょうか。

レアメタルの種類

天然に存在する元素の中で、レアメタルと呼ばれるものがどの程度あるのかわかりやすいように、周期律表を使って図にしてみました。

青くなっている元素がレアメタルです。

レアメタル

半分くらい埋まっていますね。

天然に存在する元素は89種類、そのうち半分以上の48元素がレアメタルに分類されます。

周期表はレアメタルだらけなのです。

レアメタルの物質名

レアメタルとされている物質の名前を一気に紹介します。

リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス

これだけではありません。ここに希土類(レアアース)と呼ばれる一群が加わります。

レアアース

レアアースとは、周期律表で希少を意味する希土類に分類される物質群で、以下の17種類です。

スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム

これで全部です。お疲れさまでした。

レアメタルはレアではない?

レアメタルと聞くと、地球上での存在量が少ない金属というイメージが湧きます。

しかし、実際は特に存在量が少ないわけではありません。

レアメタル以外の金属は、ベースメタル、コモンメタルなどと呼ばれていますが、そのベースメタルと比べても、存在量はそれほど変わりません。

ベースメタルの中には、鉄やアルミニウムと言った非常に存在量が多いものから、金や銀のように存在量が少ないものまであります。

レアメタルは、その中間に位置していて、スズや鉛と同程度存在しています。

存在量が多いわけでも少ないわけでもない、普通の金属なのです。

レアメタルとは手に入れるのが難しい金属のこと

レアメタルは次のような特徴を持っています。

  • 鉱石への濃縮が少ない
  • 精錬が難しい
  • 鉱物資源が偏っている

鉱石を掘り出しても、その中に僅かしか含まれてなく、鉱石から取り出すのも難しいという「手に入れるのが困難な金属」のことをレアメタルと呼んでいるのです。

逆に、鉱石に高濃度に含まれていて精錬しやすい金属は、簡単に手に入れることができたので昔から使われてきました。

レアメタルの用途

スマホとパソコン
Pixabay

レアメタルの用途は多岐にわたっていて、ハイテク製品には全て使われていると言ってもいいくらいです。

このブログで解説したものにもレアメタルは使われています。

リチウム二次電池には、リチウムはもちろんですが、それ以外にも電極用にコバルトが使われています。

≫≫リチウムイオン二次電池とは何か? 原理原則を知れば簡単に

光触媒のチタンや原子時計のセシウムなどもレアメタルですし、燃料電池の電極にもレアメタルが使われています。

≫≫光触媒とは何か?効果や原理をわかりやすく説明してみた

≫≫国際原子時とは?時刻はどうやって決めているのか

その他、半導体材料、電子材料、磁性材料、機能材料など、現在の生活には欠かせません。

スマホや電気自動車などは、レアメタルを使った材料だらけといってもいいくらいです。

高性能な機能を発現させるためには、今まで使われてきたベースメタルだけでは足りず、入手しにくいレアメタルを使わないといけなくなったのです。

レアメタルは供給や価格が不安定

レアメタルは入手しにくいため、構造的に供給や価格が不安定だという問題があります。

このようにレアメタルの供給や価格が不安定になっている理由を簡単に説明してみます。

レアメタルは偏在している

レアメタルは、その鉱物資源が偏在しています。ほとんどのレアメタルは、産出国の上位3国だけで80%以上を供給しているという状況です。

レアアースに至っては、中国だけで90%以上だと言われています。

そのため政治的に利用されることもありますし、産出国の政情不安やトラブルで、いきなり入手できなくなることも考えられます。

需給バランスが取れない

また、レアメタルは機能性材料に多く使われるために、需要が技術動向に左右されやすいという問題があります。

例えば、透明電極に使われるインジウムは、液晶テレビや太陽電池の普及時に一気に需要が増えました。

リチウムイオン二次電池用のリチウムやコバルトも、自動車が全て電気自動車に置き換わると使用量が一気に増加します。

逆に、現在多く使われているレアメタルが、新技術によって他の材料に置き換わって一気に需要がなくなる場合もあります。

このような理由で、レアメタルの供給や価格は不安定になってしまうのが、大きな問題なのです。

レアメタル採掘の労働環境

レアメタルは、発展途上国で採掘されることも多く、その労働環境が問題とされています。

鉱石を採掘しても、その中に必要なレアメタルはわずかしか含まれていませんし、そもそもレアメタルが含まれている鉱物なのか判断することも難しいという特徴があります。

見分けるために人手が必要です。

発展途上国で多くの人々が劣悪な作業環境で働いている場合が多いのです。

また、児童労働が行われている場合もあり、世界的な問題となっています。

≫≫コバルトの真実! 先端テクノロジーを支える金属の光と闇

レアメタルのリサイクル

レアメタル洗浄
Pixabay

その不安定差を解消するために、レアメタルのリサイクルも進んでいます。

磁石や電池といったリサイクルしやすいものからスタートしていますが、そのうちスマホのごく一部に使われているレアメタルなども対象になってくるでしょう。

レアメタルは、元々含有量が少ない鉱石から生産されるため、精製するのにかなりのコストがかかります。

そのため、製品からのリサイクルでもコストが見合う可能性が高いのです。

スマホやパソコンなどの電気製品の廃品は、レアメタルの宝庫です。

そのため、これらの廃材は「都市鉱山」と呼ばれることもあります。

日本は世界一の都市鉱山を保有しているので、将来的にそれが強みになる可能性もあります。

と勝手に期待しておきましょう。

レアメタルの将来

レアメタルは手に入れることが難しいため、最近まで工業的に利用されることがなかった材料です。

しかし、高い機能を実現させるためには、入手困難な材料も使いこなす必要があり、現代のテクノロジーには欠かすことができないものになりました。

しかし、手に入れることが難しいことには変わりありません。

そのため、レアメタルを安価に入手する方法、レアメタルと使わずに高機能化する方法についての研究は盛んに行われています。

今後の技術展開を期待して見守っていきたいと思います。

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