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時計を変えた振り子時計 周期運動で時を刻んだ結果

時計

以前の記事(時間と時刻の違いとは?時計とともに進化した時刻の歴史)で、時刻と時間は違うものであること、そして時間を測る時計で時刻を測るようになったことを説明しました。

その後、さらに時計が進化して現在に至るのですが、そのターニングポイントになったのが「振り子時計」です。

振り子時計から始まった時計革命を歴史を追って説明してみようと思います。

※「時間と時刻の違いとは?時計とともに進化した時刻の歴史」を読んでいない方は、本記事を読む前にご覧ください。

目次

振り子時計の誕生

前回の記事では、日時計から機械式時計(錘の力で時を刻む)の誕生までを説明しました。

その後、時計の歴史を大きく変える時計が時計が登場します。

そう振り子時計です。

振り子の等時性

1582年に “ガリレオ・ガリレイ” が「振り子の等時性」を発見しました。

同じ長さの振り子なら、重さや振れ幅に関係なく、一定の時間間隔で振れるというものです。

時間間隔をきちんと測れる時計がない時代に、このことを見い出したことには驚きです。

本質を見抜き、自分の脈拍などを頼りに数多くの実験を重ねて確認したガリレオの真骨頂のような発見です。

振り子時計の発明

ガリレオは、振り子を使った時計を試作しましたが、上手く動きませんでした。

最初に振り子時計を作り上げたのは、”クリスチャン・ホイヘンス” で、ガリレオが亡くなった15年後の1657年のことです。

振り子時計の発明によって時計の精度が大幅に向上し、分針をつけることができるようになりました。

それまでは、「分」のレベルの精度はなかったのです。

周期運動を使った時計

振り子時計は、振り子が揺れるという周期的な運動を利用したものです。

それまでは、錘が下がっていく、水が流れていくという直線的な動きを使っていました。

振り子時計は、周期的な運動を利用すれば、時計の精度が向上することを示して、それ以降の時計の流れを決定つけたものなのです。

周期運動を使った時計の構成

周期的な運動を時計に応用するためには、大きく3つのシステムが必要です。

周期運動部分

当然ですが、周期運動をする部分がないと始まりません。

振り子時計では振り子がそれに相当します。

エネルギー供給部分

振り子のような周期運動は、そのままにしておくと止まってしまいます。

ですから、振り子が揺れ続けるようにエネルギーを供給しなければなりません。

ブランコを揺らし続けるために、後ろから押しているようなものです。

このとき、いつも一定の力でタイミングよく押すことで、一定周期を保ったまま揺れ続けることができるようになります。

振り子では、一定の力でタイミングよく押すという操作に機械式時計で培われた技術が利用されました。

当初は錘が下がる力を利用したもの、その後はゼンマイが主に使われるようになります。

一定のタイミング

周期運動を続けるために一定のタイミングで力を与えないといけませんが、一定間隔で押すことができるのなら、そもそも周期運動を使う必要はありません。
タイミングが僅かにずれても、周期運動がそれを打ち消してくれることで精度が向上するのです。

信号取り出し部

周期運動をしている部分の振動数を時間として取り出して表示する必要があります。

振動部にできるだけ影響を与えないように、針を動かすなどの工夫が必要となります。

バネを使った時計

ウォッチ

周期運動は振り子に限ったものではありません。

例えば、バネを伸ばして手を離すと、縮んだり伸びたりという振動をします。

これを使って時計を作ると、重力などの影響を受けにくくなります。

バネといっても、普通のバネでは扱いにくいので、左右に振動する「ねじりバネ」が時計に応用されました。

その後、細いゼンマイを使って、ねじりバネより安定して左右に振動するヒゲゼンマイを使うことで更に精度が向上します。

これは、現在の機械式時計にも使われている技術です。

ヒゲゼンマイは振動して周期運動するもの、巻き上げるゼンマイはヒゲゼンマイにエネルギーを与えるものと役割が違うふたつのゼンマイが使われていることになります。

摩擦を極限まで減らし、温度変化で寸法が変わることを防ぎ、摩耗していくことを避ける、そうやって精度を高めていきクロノメーター級と呼ばれる精度の時計が生み出されました。

≫≫クロノメーターとは?航海のために進化した高精度時計の歴史

クォーツ時計の誕生

そして20世紀に入るとクォーツ時計が誕生します。

クォーツ時計に使われている周期運動は、水晶の振動です。

何かものを叩くと音がします。

これはエネルギーを与えたことで、物体が振動するためで、その振動数は物体の形や硬さによって決まります。

クォーツ時計は、それを利用したものです。

クォーツ時計の原理と仕組み 世界を変えた日本の技術」という記事でも紹介しましたが、水晶には電圧をかけると変形する圧電効果という特性あります。

これはタイミングよく電圧を与えることで、水晶が振動し続けるということを示しています。

エネルギー供給部に電子回路が使えます。

また圧電効果では、変形すると電場が発生するという逆の作用があります。

これを利用すれば、電子回路で時間を取り出すこともできます。

これを利用したのが、クォーツ時計です。

原子時計の誕生

ここまでの時計は、物質を使って作られました。

そのため、どうしても加工精度の問題が付きまといます。

そこで、原子そのものの振動を使うという発想が生まれます。

原子時計です。

セシウム原子に一定の周波数の電磁波を照射すると、それを吸収してエネルギーの高い状態になります。

それがもとの状態に戻るとき、安定した周波数の電磁波が発生します。

照射する電磁波がエネルギーを与えるためのもので、発生する電磁波が更に精度の高い振動に相当します。

よく利用されているセシウム原子時計は、1億年に1秒くらいの誤差で時間を測ることができます。

振動数と精度

時計の精度を上げるためには、周期的な変化を利用するのですが、その振動の速さが精度に関係してきます。

簡単に言えば、振動が速い方が精度を高くできるのです。

振り子の場合は、1秒に1回、ひげゼンマイでは1秒に10回くらいの振動です。

これがクォーツになると、1秒間に数千から数百万回、セシウム原子時計では92億回の振動です。

振り子時計によって、周期的な変化で時間を測定するという方向が決まり、その方向で時計が進化していったことがわかります。

再び時刻と時間の関係

もう一度、時刻と時間の違いを確認しておきましょう。

時刻とは一日のうちのどの時点なのかを示すものでした。

言い換えると地球の自転を表したもので、太陽の方向からずれている角度を表現したものです。

ですから、時刻を測ろうとすると天体観測が必要になります。

これに対して、時間は一定の時間間隔を表す単位です。

時計の精度向上による変化

時間を測る時計で時刻を表すためには、時刻合わせが必要です。

天体観測から時刻を割り出し、その時刻に時計を合わせるのです。

時計の精度が低いと、たびたび時刻合わせが必要になります。

そのこともあって、時計の精度がどんどん向上していったのです。

原子時計での逆転現象

時計の精度が上がっていき、原子時計まで正確になると、時刻と時間の正確性が逆転します。

時計の精度が、地球の自転のばらつきよりも高くなってしまったのです。

それまでは、天体観測による時刻と時計の時刻表示がずれるのは、時計の誤差によるものでした。

しかし原子時計では、時計の誤差は小さく、地球の自転のばらつきによって時計の時刻表示との誤差が発生するようになったのです。

時刻は天体観測で求められるものです。

時計は時間を測定するものです。

時計に表示される時刻と、実際の時刻がずれたら、時計の方を時刻合わせしないといけなません。

現在行われている時刻合わせが「うるう秒」なのです。

うるう秒って何? 次回はいつ? 時間にまつわる不思議な話」という記事で、すでに「うるう秒」の説明をしているのですが、今回は時計の進化の話からもう一度「うるう秒」に着地してみました。


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